我が国の下水道処理は先進諸外国に比べ遅れておりまして、平成7年度末の普及率全国平均は54%に過ぎません。 またこの普及率には都市部と地方とに大きな格差があり、人口5万人以下の市長村での普及率は17%です。こうした状況から下水道整備は国の重要事業として現在急ピッチで進められております。 下水道事業には汚水を浄化して河川、湖沼、海域の水質を保全するという重要な役割がありますが、一方で水から分離した汚れである汚泥を排出する設備であることも、また現実であります。 従って下水道と汚泥処分施設とは表裏一体での整備を進める必要があるのですが、汚泥処分施設の整備はほとんど棚上げにされたまま、取り敢えず下水道の整備に取り掛かっている例が多いように見受けられます。 特にもっとも簡単な汚泥の処分方法である陸上埋め立ては、処分場建設について地元住民のコンセンサスが得られないなど、計画時点で挫折するケースが多く、こうした例からも汚泥処分施設整備の遅れに拍車がかかっている状況にあります。 鶴岡市では、下水汚泥の全量をコンポスト化し、市民に使っていただくことで緑農地に還元してきましたが、施設の能力がそろそろ限界に近付いてきたために、汚泥を原料化する方法について検討を重ねてきました。 当初は汚泥の乾燥システムや溶融システムについて検討をおこないましたが、建設コストが大きいことから、鶴岡市単独ではなく広域的に計画を立てようということになりました。 つまり近隣市町村との歩調を合わせるために、長い時間が必要だということです。 ところが現実にはどんどん汚泥の排出量が増えていくわけですから、悠長な状況にはありません。 我々がEMについて情報を入手したのは、そんな時でした。 EMによる汚泥減量の最初の実験は、嫌気性汚泥消化法で行ったのですが、あえなく失敗に終わりました。 ちょうどそのころ比嘉先生が我々の浄化センターにお見えになり、発生した汚泥を減らすのではなく、水処理で汚泥が発生しないようにEMを使った方が良いとのアドバイスをいただきました。 そこで実験場所を浄化センターの試験室から鶴岡市の小規模処理場である湯の浜浄化センターの実プラントに移して、平成8年6月から9年5月まで1年間にわたって実験を行いました。 以下、写真を中心に説明します。
夏は7月一杯スキーが楽しめる月山スキー場まで1時間、温泉に泊まって海水浴もスキーもできるという、世にも不思議な行楽が可能です。 沖縄からは、羽田で乗り継いで4時間半ぐらいの距離です。
ディッチの中を活性汚泥と下水が回りながら、一部は何週も回ることから、負荷変動に強いという特徴がありますすが、反面、生物量の調整や、エアレーション時間の調整がやりにくいといった短所もあります。
培養は35℃で1週間かけ、PH3.5 を目安としました。
エアレーション時間が長く、活性汚泥の自己酸化が進みやすいことから、微生物の生息する汚泥の核を確保するために、あえて最初沈殿池を設けないのだと私は理解しております。 オキシデーションディッチから出た混合液は、最終沈殿池で固液分離され、汚泥は返送され1部が余剰汚泥として引き抜かれます。
白いスカムは酵母菌によるものだということです。これを沈砂地に週1回の頻度で投入をしました。
発生固形物量というのは、汚泥から水分を除いた固形物のことです。 汚泥量で比較をしますと、汚泥の持つ水分に左右されますので、EMによって分解された量なのか、単に水分が少ないのかわかりません。 従って、今回の実験は、全て固形物で比較しています。 このグラフから、EMを投入したことにより、年間平均で約32,5%の発生固形物量の減少が確認されました。 しかし、この32,5%の減少は、湯野浜浄化センターに限定した場合という条件がつきます。
発生固形物の減少に最も相関のある資料はこのSRTだけです。 SRTというのはスラッジ・リテーション・タイムのことで固形物がどれだけ処理水槽内にあったかという固形物の滞留時間です。 これが長ければ長いほど汚泥は自己酸化により減少します。 グラフのように実験期間ではEMを投入したら、まあ予想外の効果だったんですけれども、スカムが減少しました。 それでSRTを長くした運転が可能になって、対象期間に比べてこれだけの差が生じました。実験期間ではEMを入れるとSRTを上げる生物量を多くした運転が可能になるということがありました。 SRTが1日伸びるごとに減少する固形物量を産出し、その値を先ほどの32.5%の減少分から差し引いた残りの減少分が、EMによる純然な固形物減少効果ということになります。
湯の浜浄化センターにおいてはEMを投入したことで二つの効果が認められました。 一つはSRTの上昇運転が可能になったこと、これはオキシデーションディッチでのスカムの発生がEMの投入によって抑制されたため、生物量を多くすることができるようになったためと考えられます。 二つめは発生固形物量の16.4%の減少です。 この実験は国や民間の多くの下水道研究者が見学に訪れました。その中で固形物が減少するのはなぜだろうという議論が必ず起こりました。ある高名な汚泥の研究者は沖縄のEMプラントを見た上で、沖縄では光合成細菌が働いていたが、湯の浜では酵母菌が優先種になってるようであるというような見解でありました。 7月に東京ビッグサイドで開催された、第34回下水道研究発表会でも、西原環境衛生研究所が「酵母菌による固形有機物の減量化」について研究を発表しておりました。 これは通常有機物処理に用いられるバクテリアの汚泥生成率が、除去BOD当たりおよそ0.5 であるのに対して、酵母菌の汚泥生成率は、およそ0.2 と減少することに着目し、固形有機物処理において酵母菌が優先種と成り得ることと、酵母菌による固形有機物処理では汚泥が減少することを実験により確認したという内容でした。 我々の今回の実験も、殆ど同じことをEMを使って、下水処理において行ったものとの見方ができると思います。 これは、2年間EMに関する実験を行ってきての感想になりますが、どうもEMイコール光合成細菌というイメージが定着しすぎている感がいたします。 そうではなくてEMは5科10属80種という微生物の大集団なのですから、気候や土地柄によって、適材適所的に優先種となる菌が異なることもあると思います。光合成細菌を優先種にすることにこだわり過ぎて失敗するよりも、酵母菌あるいは乳酸菌など比較的簡単な菌で現状を打開でき、かつEM投入費用を回収できれば一歩前進と考え、次の段階へ進んで行くといった方向がベターであると思います。 この実験と平行して、酵素によって微生物の活性を促進させ、自己酸化により汚泥を減少させる実験も行ったのですが、こちらは全く効果がなかったことも我々は確認しております。このことから、EMによる効果は、微生物の活性度を増加するものではなく、微生物の優先種を変える働きによるものであると容易に推察できると思います。 最後に、EMの下水処理への応用例は、まだ多くはないようですが、今後採用される方々との情報交換を望むものであります。また、実験に際しましては、比嘉先生、それからEM研究所の荒川課長、それからEMワールドの浅井調査員の皆様にご協力をいただきました。この場をお借りして御礼を申し上げます。 |
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−1997.11.8
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