EMフェスタ97 > 発表大会

ヒラメ養殖におけるEMの活用
西銘  仁正
沖縄県 伊平屋村漁業協同組合
代表理事組合長

 はじめに、県内の漁業の現状について少しばかり触れておきたいと思います。
 県内漁業は沖合漁場での浮き漁礁漁業、それから深海1,000 m周辺で行われておりますソデイカ漁業、マグロはえ縄漁業などは現在のところ横ばいで推移をしております。

  また、沿岸(リーフの周辺でございますが)で行われておりますモズクの養殖、車海老養殖等、栽培漁業の進展は近年明るさを取り戻しております。

 全体としては伸び悩みの状況にありまして、近年遠洋漁業、沖合漁業が減少し沿岸漁業が顕著に推移し、沿岸漁業への依存度が高くなっております。

総じて申し上げますと、漁業を取り巻く状況は資源の減少、高齢化、従事者の不足、赤土の汚染などによります漁場の荒廃、輸入水産物の増加、魚価の低迷など、多くの問題を抱えておりまして、このような中で、近年計画的安定的に収益が得られる養殖漁業への期待が高まっております。

 各地で海草ではモズク、海ブドウと呼ばれていますがクビレズタ、魚類の養殖ではマダイ、ハマフエフキ、カンパチ、ハタ、それから貝類ではシャコ貝、タカセ貝、ミドリ貝の養殖などが盛んに行われつつあります。

 それでは、少し前置きが長くなりましたが、養殖魚種としてヒラメを選んだ経緯について報告をいたします。

 沖縄県の魚類養殖は陸上や海浜周辺で海浜を囲って行う車海老、海面養殖のマダイが主流です。伊平屋島で養殖を考えた時に、本島地区と競合するような魚類選定をした場合、地理的条件や競争力を考えますと難しいとの判断をいたしました。

 そこでこれまで沖縄の気候条件には適さないと言われていたヒラメに焦点を当てて、'93 年11月、試験養殖を開始したわけです。

 93年の養殖条件は、養殖尾数:2500尾、養殖方法:流水式、使用イケス:5,5トンのイケス5基、水流:一日66トン(1イケスあたり5,5トン×12回)でした。

 少し付け加えますと、このヒラメ養殖、温帯性の魚類でありまして、熱帯海域には向かないと言われておりましたが、私どもの海域では、地下10mぐらいから海水を汲み上げると、かなり低水温の海水が取れるという良い条件もありました。

 この良質の地下海水を使って、イケスの衛生管理も徹底し養殖を始めたのですが、開始2か月より魚病発生、3カ月後には堪え難い悪臭を発生しはじめました。

 これらの問題に対して、当時水の量を増やしていくとか、1日12回転を20回転ぐらいまで水量を上げまして、薬剤、抗生物質等で対処いたしました。

 EMの活用動機につきましては、以前比嘉先生の講演を聞いたことがありました。またEM販売者の皆さん、EMを活用している農家などのご意見を聞きまして、ヒラメ養殖の問題点を解決できるのではないかというふうに考え、決定をいたしました。

 また、当時魚病、悪臭対策等による薬剤投与などでヒラメを食べることに対する私自身の抵抗、と同時に漁場環境汚染の懸念があったわけです。

 そこでEMの使用で悪臭を除去し、イケス内および漁場環境浄化をはかり、薬付けでないヒラメ、自分自身が安心して食べれるヒラメを生産し、自信を持って消費者の皆さんに供給をしていきたいという思いもありました。

 EMの使用方法、試験養殖における使用方法ですが、まずイケスの水量は28tに対してEM1号と4号をそれぞれ10リットル投入し、同時にヒラメの餌にもEMを添加し、飼料に染み込ませてヒラメに直接与えるというふうなことを行いました。その結果を6点ほど紹介いたします。

1、悪臭の減退。

  これまで作業員が頭が痛くなる、吐き気がする、などの強烈な悪臭が出ておりましたが、EMを使用した後4日目から悪臭が、臭気が殆ど感じられないほど減少いたしました。

2、魚病気の現象。
  魚にもかなり病気がありまして、滑走細菌症、白点病、内臓疾患などがイケス全体で多発しておりました。EM使用後は激減し、現在では年1回か2回ぐらい一部のイケスで病気が発生しますが、以前に比べますともう皆無に等しいぐらい減少しております。

3、ヘイ死魚の減少。
  稚魚から成魚までに成長するまでに死ぬ固体が激減いたしております。

4、水量の減少。
 イケス内の汚泥がEM使用後は少なくなりまして、水量も使用前の3分の2に落とすことができました。その結果、養殖尾数も増やすことができました。

5、薬剤の減少。
  魚病は一つのイケスで発生をいたしますと、たちまち全体に広がります。場合によっては1回の発生で全滅の危機に直面することも多々あります。病気が発生すると、全イケスを薬浴をしていたわけですが、EMを使用してから魚病の発生がほとんど無くなり、抗生物質など薬剤を使用する機会は激減をしております。現在では一部イケスで年に1回ないし2回程度、病気の発生がございますが、その場合餌止めをして、発生イケスのみ対処することによって充分対応できるようになっております。

6、大幅なコストのダウン。
  薬剤使用代金がイケス1基当たり、ざっと7万5,000 円ぐらいかかっておりました。EM使用後は3万3,000 円ぐらいに薬剤の使用コストが落ちました。現在では拡大培養液を使用しておりますので、更に減少しておりまして、3万3,000 円の3分の1ぐらいに落ち着いているのではないかと思います。

 それではEMの使用についてスライドをもってご紹介いたします。


 拡大培養液を作っているところ。20リットル、30リットル単位で毎日作り続けます。

 EMを飼料に添加、染み込ませているところ。

 ここもEMを飼料に添加しているところ。


 EMを添加した配合飼料。

 養殖イケスの全景。約25平米ぐらいのイケスが5基並んでおり、それが3列あります。15基で使用尾数が1万6,000 尾ほど。

 ヒラメに餌を与えているところ。ヒラメの健康状態を確認しながら、1匹1匹見て餌をあげています。


 イケス内のヒラメの様子。ヒラメは餌を食う時だけ少し動きますけれども、餌を食い終わるとじっとしています

スライドは以上でございます。

 今後の展望についてですが、車海老養殖は別としまして、沖縄県下では初めて地下海水を利用した魚類の陸上養殖をEM使用によって成功させることができました。

まだ幾つかの克服すべき問題はありますが、台風の多い本県で魚介類の陸上養殖の展望が少し見えてきたような感じがいたします。

 今後ヒラメ養殖を6万尾に規模拡大をする計画をしておりまして、新しい養殖施設では見学コースなどを設けてEMを活用して、人と環境にやさしい陸上養殖の一例として多くの人達にご紹介をしてまいりたいと考えております。

−1997.11.8
西銘  仁正
1981年伊平屋村漁業協同組合設立、初代組合長に就任、現在にいたる。1994年より、地域漁業の活性化をはかるべく、地下海水を利用したヒラメの陸上養殖を始めた。初年度から魚病や排水の悪臭などで苦慮したが、EMの活用でこれらの問題を解消し現在にいたる。