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EMフェスタ2004 専門分科会
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EM活性液のポイント 酵母、乳酸菌の働きについて |
松本 潤(まつもと じゅん) EM研究機構
プロフィール:
昭和53年8月8日生まれ 長野県小諸市出身
琉球大学農学部修士課程卒業後、H15年EM研究機構に入社
現在に至る |
松本
はじめまして、EM研究機構の松本と申します。タイトルは「乳酸菌、酵母の関係から見たEM活性液のポイント」です。いつも皆さんはEM1号からEM活性液を作られていると思います。EMは、見ただけでは茶色い液体ですので、中に菌がいるとは、想像しづらく、その結果、微生物のことを考えずにEM活性液を失敗させてしまう等の経験がある方もおありなのではないでしょうか。今回は特に新谷の方から説明があったように、乳酸菌、酵母という微生物の点からEM活性液をどうやって作ったら失敗せず作れるかを、簡単ではありますが説明させていただきます。
本発表の目的です。始めにEM活性液の特徴をおさらいし、良いEM活性液とはどういうものか、また、その特徴について説明します。次に、EMの中で中心的な役割を果たしている乳酸菌、酵母について、簡単な説明をさせていただきます。光合成細菌もEMを構成する中心的な微生物ですが、先ほど松下の方から説明がありましたので、今回は乳酸菌と酵母を中心に活性液について説明させていただきます。
まず、EM活性液について説明します。EM活性液はEM1号中の微生物を、糖などのえさを加えて菌を活性化させたものです。そのためEM1号とEM活性液の一番の違いは、何と言っても菌の数が違うということです。この図を見てください。EM1号はえさがなく菌が休眠している状態なので、活動している菌が非常に少ないです。それに比べて、EM活性液は糖蜜や砂糖など、微生物のえさが豊富なため、非常にたくさんの菌がいます。
この表は、EM1号とEM活性液の違いを大まかに示したものです。品質は、酵母、乳酸菌、光合成細菌がバランスよく含まれているか、またその液を種菌としてEM活性液を作ったときにpH3.5以下になるかを指標としています。EM1号は酵母、乳酸菌、光合成細菌がバランスよく含まれていますが、EM活性液の場合、温度、水質、雑菌、基質の種類などにより、微生物の層が大きく変わってしまい、品質を安定させるのは難しくなります。そのため、品質の面ではEM1号に比べると劣ります。微生物の活性度は、EM活性液が高く、EM1号は休眠している菌が多いので活性は低くなります。また、保存性については、EM1号は1年程度保存がききますが、EM活性液は品質に差があるので保全性があるとはいえません。
このEM活性液の品質を示す指標は、いろいろあり、個人の経験則というものもあるとは思いますが、一般には、どういったものが良いEM活性液かを簡単にまとめて見ました。
では、良いEM、効果の高いEM活性液とはどういったものかというと
1つは乳酸菌を主とした有用菌が多く、微生物が活性化状態にあるものです。例えば、土壌などにEM活性液を散布したときに、有機物を分解して腐食を作る、こういった効果は菌自体の働きなので、多くの微生物が活性化した状態にあるものは効果が高いと思われます。
またもう一つは微生物が作り出した有用成分が豊富なEMです。例えば、悪臭があるところにEM活性液を薄めて散布したときに、悪臭がすぐ消えたという体験をされた方は多いともいます。これは、微生物自身が悪臭を食べるというほかに、菌が作り出した酵素が直接悪臭に作用しているためです。このような酵素や有用物質が豊富なEMほど効果が高いと思われます。このように、EMの働きは微生物自身と微生物が作り出した酵素の量が品質に大きな影響を与えます。
その判定基準として現場の方は、においや色など、いろいろな基準でEM活性液を評価されていると思います。しかしその中でも1番客観的で簡単なのはご存知の通りpHで、pH3.5以下なら良いEMというのが知られています。
では、なぜpH3.5以下のEM活性液がいいのを説明したいと思います。まずpHは水の性質を示す指標の1つで、水が酸性かアルカリ性のどちらに傾いているかを表します。
例えば、レモン水や石けん水。レモン水は酸っぱく、酸味があり、リトマス紙を赤くします。このようなものを酸性物質といって、石けん水のようにぬるぬるして苦みがあり、リトマス紙を青色に変えるものをアルカリ性といいます。
pHは、酸性でもアルカリ性でもない中性の範囲をpH7とし、それより低いものは酸性、高いものはアルカリ性としています
EMのpHがなぜ3.5以下がいいかと言うと、このような強酸性になるとEMを劣化させる雑菌が繁殖できなくなるためです。通常、空気中や人の周りにいるいろいろな雑菌はpH7前後の範囲で繁殖しているので、それより低いpH3.5以下になると生育できなくなります。そのためEMの保存性が上がるほか、雑菌の繁殖による有用成分の減少もなくなります。
EMの場合、乳酸、酢酸などの酸によってEMのpHは下がります。そのpHの低下には特に乳酸菌、酵母が非常に大きくかかわっているので、次は乳酸菌、酵母についてと、その働きを説明したいと思います。
はじめに乳酸菌とその働きについて説明します。乳酸菌とは炭水化物、ブドウ糖や、糖蜜などの糖分を食べて、乳酸などの酸をたくさん作り出す微生物です。
乳酸菌はいろいろなところで見ることが出来ます。例えば、口の中や、胃や腸の中、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、肉製品、また加工食品などです。乳酸菌はその生育環境によって特に3種類に分けることができ、
まず、1つはヨーグルト、バター、チーズなどにいる乳酸菌。もっとも良く知られている乳酸菌です。
2つ目は、植物系乳酸菌。サイレージや漬物、キムチなどで生育しているタイプの乳酸菌です。
そして3つ目が、腸管系乳酸菌。人の腸の中で活動する乳酸菌です。乳酸菌は生育環境によって主に、この3種類のタイプに分けることができます。
その中でもEMで見られる乳酸菌の多くは、サイレージやキムチなどでよく見つけられる植物系乳酸菌で、糖蜜の代謝能力に優れた特長を持っています
これは代表的な乳酸菌の写真です。肉眼では、小さすぎて見えませんが、顕微鏡を使うと、EM活性液中のさまざまな乳酸菌を観察できます。左上のはラクトバチルス・ブルガリクスといって、ヨーグルトなどで見られる乳系乳酸菌。こちらのラクトバチルスカゼイやプランタラムは、植物系乳酸菌で、EMの中で見られる乳酸菌の多くはこのタイプです。このように、乳酸菌といっても形や性質が違うさまざまなタイプの乳酸菌が存在します。
つぎに酵母について説明します。酵母は乳酸菌、大腸菌などに比べて非常に細胞が大きいのが特徴です。細菌の大きさが1マイクロメーター程度であるのに対して、酵母はその大きさの10倍前後あり、分類的にはカビやキノコの仲間とされています
酵母が古くから人の生活と密着に関係しているのは、よく知られています。ワイン、日本酒、ビールなどのお酒に含まれるアルコールを作っているのもすべて酵母です。また、パンを作ったり、サプリメントなどにも最近は使われ、人気の商品となっています
それでは、EM中で酵母がどのような働きをしているかというと、EMの中での酵母もパンなどを作る酵母と同じで、お砂糖からアルコールであるエタノールと二酸化炭素を作るユ発酵‘をしています
そのほかに発酵を行う酵母で有名なのは、ビール、ワインなどを作る酵母、パン酵母など、パンを作るサッカロミセス・セレビシアというものがもっとも有名で、酵母と言ったらまずこの酵母が挙げられます。しかし酵母はほかにもいろいろ種類があり、例えば廃水処理に使われるピチア、ブドウ糖の生産やでんぷん廃液の分解に使われるサッカロミコピシスという酵母や飼料酵母に使われるカンジタ・ユチリスなど、いろいろな種類の酵母があります。
この、酵母、乳酸菌が、実際にEM活性液の中で、どのような働きをするかというのを実験してみました。試験は、EM中の酵母、乳酸菌のEMに占める割合が変わることで、活性液の品質の指標となるpH
、糖分の指標であるBrix、また酵母、乳酸菌の数にどのような影響を与えるかについて、調べました。試験手順は、まず、この水の中に糖を加えます。
このように糖を加えて
次に、乳酸菌だけを増やした液体を加えます。
その次に、酵母だけを増やした液体を加えるのですが、この酵母を加える時期を、乳酸菌と同時に加える0日後、1日後、3日後、5日後と日数をずらして加えます。日数をずらすことによって、乳酸菌と酵母の菌数が変わります。その違いによってどのような影響が出るかというのを試験しました。
これは、酵母の添加時期の差がpH に与える影響について示した図です。上の図は21日間のpHの変化で、下の図は最初の6日間のpH の変化について拡大した図です。まず見ていただきたいのが、この酵母と乳酸菌を同時に加えた0日目区です。これは21日間、つまり3週間たってもpHが3.6ですから、pH3.5以下の基準に達していないのがわかります。一方、1日後、3日後、5日後区では、反対に酵母添加が早いほど、このようにpHの低下が低くなっていることが分かります。これはどういうことかというと、酵母の数が増え過ぎた場合、酵母は、乳酸菌のえさをまで食べてしまうため、乳酸菌が十分な有機酸を作れなくなりpHは低くなりません。しかし、ある程度乳酸菌が増えた状態で酵母を添加すると、今まで乳酸菌が食べることが出来なかった物質を酵母が食べやすい物質に変えてくれます。その結果、乳酸菌の出す有機酸の量が増えるので、pHの低下が促進されます。つまり、酵母と乳酸菌はpHの面から言っても非常に良く関係し合っていることが分かります。
これは酵母添加時期の差が、糖蜜のブリックス(糖度)に与える影響について、示したものです。上のグラフがブリックス、下のグラフは酵母の数を示しています酵母の添加が早いほど糖分の減少が速いことが分かります。一方、それに対応するように酵母の数も、加える時期が早いほど増加しているのが確認できます。酵母は糖蜜をよく食べることがわかります。
これは、酵母添加時期の差が乳酸菌数と酵母数に与える影響について示した図です。上の図が酵母の変化、下の図が乳酸菌の変化です。まず、酵母は先ほどの図と同じで0日後、1日後、3日後、5日後と、添加が早いほど爆発的に増えて、その後、急激に減っているのが分かります。しかし乳酸菌の数は酵母添加時期が遅いほど少なくなり、5日後、3日後、1日後、0日後と順にゆるやかになっているのが分かります。これも、酵母と乳酸菌のエサの競合が関係しているためです。
酵母と乳酸菌はEM中でお互いに非常に大きく影響を及ぼしあっています。
この写真は、上がpH3.5以下のEM活性液、下のものが、pH3.5を切らない活性液の顕微鏡写真です。pH3.5以下のEM活性液は、円形の酵母と棒状の乳酸菌がバランスよく含まれていますが、pH3.5
をきらないEM活性液は酵母だけが優先しているのがわかると思います。このように酵母が増えすぎると、乳酸菌のエサまで食べてしまい、EM活性液のpHが3.5以下にならない原因になります。
その一方で、乳酸菌だけを加えても、糖蜜のpHを下げるのは、非常に時間がかかってしまいます。理由は、先ほどの実験結果からわかるとおり、EM1号に含まれる乳酸菌は、酵母の代謝物も利用しているためです。
EM活性液のポイントです。乳酸菌、酵母などの微生物の観点から指摘すると、まず、pH3.5以下の安定したEM活性液は、作成初期の乳酸菌数が酵母数の100倍以上であることがバランス良くpHを下げるポイントになります。
このように雑菌が多い場合も、pHを下げる有機酸や有用な物質が食べられてしまい、pHが上昇して腐敗する原因にもなります。
このように菌のバランスを整えるためには、通常EMを培養するように、えさや空気、水分、温度など、いろいろな影響が微生物に作用して菌のバランスが変わってきます。
良いEMを作るためにはまず十分な糖分が微生物の増殖に必要です。特に乳酸菌、酵母は糖から有機酸やアルコールを作ります。そのとき十分な糖分がないとpH を下げる有機酸や有用物質が生産されないため、腐敗しやすい原因になります。また、微量のミネラルも必要で、特にミネラル分の少ない市販のグラニュー糖でEM活性液を作る場合は効果があるといえます。
これは米ヌカをえさとして添加したEM米のとぎ汁発酵液とEM活性液の違いがpHと微生物数にどのような影響を与えるかを示したものです。赤色がEM活性液、青色がEM米のとぎ汁発酵液、つまり米ヌカを添加したものです。42日間測定しましたが、米のとぎ汁区は、米ヌカを添加することでpHがEM活性液よりも低くなり、また微生物も42日間を通して非常にEM活性液よりも高い活性のまま推移していることが分かります。
このように米のとぎ汁活性液は、菌の活性が上がり、1カ月以上たってもEM活性液より常に高い菌数を保ち続けました。
この理由として、米のとぎ汁活性液には、米ヌカのミネラル分と、米ヌカ由来の微生物があげられます。このミネラルの効果と微生物の働きでpHをより下げていることと考えられます。
菌のバランスを整えるポイントとして水の違いも挙げられます。きれいな水、大腸菌などの雑菌が少なくてミネラル分が豊富な水が良い水です。天然水、井戸水は理想的ですが、現在の多くの井戸水は雑菌などに汚染されているケースも多く、その場合は、失敗の原因になるため、じゅうぶんにきれいな天然水、井戸水が手に入らない場合は水道水を使った方が失敗せずにEM活性液を作ることができます。
EMの培養温度は、人と同じ30度から40度付近の温度が最も適しています。EMには、複数の微生物が含まれていますので、少しの温度の違いで、EMを構成する微生物の優先度が変わる場合があります。例えば培養温度が極端に低いと、比較的高温を好む乳酸菌よりも酵母の方増えやすくなります。また、EM活性液作成の際に、空気の入れ過ぎは厳禁です。なぜかというと、EMのpHを下げる有機酸は、密封して空気が少ない条件で作られやすいためです。空気が多いとpHが下がりにくい原因になるほか、雑菌が侵入して活性液の質が悪くなるということもあります。
これは微生物の増殖変化全般について示した表です。微生物は、最初に誘導期、細胞が栄養源をもとに活発に動き回る対数増殖期を経て、定常期、死滅期と、このようなサイクルで増殖します。
EM活性液についても同様で、作り始めてから5日から10日の間で非常に速い速度で増え、その後、安定する定常期を経て、だんだん数が減っていくというサイクルをとります。そのため、EM活性液を効果的に使うには、微生物の活性の高い期間、つまりEM活性液作成から1カ月程度を目安に使うのがいいのではないかと思われます。
以上、乳酸菌、酵母の関係から見たEM活性液のポイントをまとめます。EM活性液は光合成細菌、乳酸菌、酵母を中心とした微生物が活性化している液です。EMの効果は菌菌自身の作用と菌の作り出す抗酸化物質の働きで効果を発揮します。
これらを作り出す乳酸菌、酵母、光合成細菌は温度、密封条件、エサ等の環境によって、優先する菌も全く変わり、その結果、EMの質に大きな影響を与えます。EM活性液を作るときは上記のことを考慮しつつ、かつ、乳酸菌の密度を高め、pHの低下、有機酸による雑菌の抑制、有用物質の確保をまず第1に作るのが失敗しないコツの第1だと思います。
通常言われていることと、あまり変わりがなく、新鮮味に欠ける発表だったかもしれませんが、この発表で「EMは微生物である」ということが少しでも理解しやすくなれば幸いであると思っております。ご清聴、ありがとうございました。
新谷
松本さん、どうもありがとうございました。きょうの発表で分かっていただいたのは、pHを下げるというのはシンプルに言えば、乳酸菌をたくさん増やして乳酸を増やして、それでpHを下げています。ですから、活性液を作るときに、微生物からの視点で見ると、乳酸菌をいかに増やすか、その乳酸菌の中でもEMの中心の乳酸菌はカゼイやファーメンタムなどの乳酸菌なので、それを増やす。ときどきヨーグルトなどを加える方もおられるのですけれども、ブルガリクスは牛乳では増えるけれども糖蜜では増えにくいということを分かっていただいて、米ヌカなどについている植物性の乳酸菌を入れた方がいいということです。
それと、このpH3.5ということをよく聞かれます。これは例えば、東京都の健康安全研究センター、食品の苦情Q&Aのホームページや冊子に掲載されているんですけれども、昔、紅茶キノコがはやって消費者から「紅茶キノコというのはいろいろな菌が入っているみたいですが、危険な病原菌は存在氏しないか」という質問に対して、「紅茶きのこのpHは3.1以下である。このため各種病原細菌を紅茶きのこの中に入れても48時間以内に死滅するので、病原菌は通常存在しない。」つまり、飲んでも安全ですという回答をちゃんと出しています。
あと、やはり、こうして見ると乳酸菌と酵母の関係はすごく微妙です。pHを下げようと思うと、酵母がちょっとあった方がいいです。ただし、酵母が増え過ぎるとpHが下がらない。また、酵母はほかの菌のえさにもなるので、酵母が増え過ぎるとほかの雑菌が増えやすいということになります。通常の現場では、活性液を作るときには、皆さん酵母と乳酸菌の添加時期を変えられないので、やはりそういった時には知っておいていただきたいのは、乳酸菌は嫌気性菌、酵母は好気なので、活性液を作る時にちょっと油断して1日ふたを開けたままにしていると、あっという間に酵母が増えてしまいます。表で見ていただいたように、酵母が多い状態で始めてしまうとpHが下がらないとか、温度が低いと酵母の方が先に増えてしまうのでpHが下がらないという状態にもなります。