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EMフェスタ2004
専門分科会

コーディネーター
新谷 正樹(しんたに まさき) EM研究機構

パネリスト

松下 愉久(まつした よしひさ) EM研究機構
松本 潤(まつもと じゅん) EM研究機構


2004.11.14

新谷
 おはようございます。ただいまよりEM基礎技術分科会を開始させていただきます。本日コーディネーターを務めさせていただきます新谷と申します。よろしくお願いいたします。
 では、まず第1パネリストの松下さんを紹介します。松下さんは東京大学で修士号を取得された後、EM研究機構に入社され、現在研究部でEMの中の特に光合成細菌の研究に従事されています。
 比嘉先生は講演の中で、いつも光合成細菌の重要性を強調されています。ですから、皆様も光合成細菌に大変興味を持っておられると思います。今日は少し難しい部分もあるかと思いますが、光合成細菌の中でもEMに使用されている光合成細菌について皆様に知っていただきます。また、光合成細菌を知ることが、今後、皆様が技術開発を行ったり、現場で良質なEM活性液を作っていく上でポイントになるので、今日は松下さんに「光合成細菌の生態と利用」というタイトルで発表をしていただきます。では、松下さん、よろしくお願いいたします。

EMフェスタ2004 専門分科会
光合成細菌の生態と利用について
松下 愉久(まつした よしひさ) EM研究機構

プロフィール:
1976年1月16日 和歌山県串本町 生まれ
東京大学大学院農学生命科学研究科卒業
2003年 株式会社EM研究機構入社
現在に至る



松下
 EM研究機構の松下です。よろしくお願い致します。本日は「光合成細菌の生態と利用」ということで、皆様が馴染みの薄いと思われます光合成細菌についてお話をさせて頂きたいと思います。乳酸菌や酵母、麹菌、大腸菌など、善きにつけ悪きにつけこれらの微生物は皆さんも聞いたことがあるかと思うのですが、今日は光合成細菌についても理解を深めて頂けたらと思います。



 本発表の目的をここで確認させて頂きたいと思います。
 まず、光合成細菌の基本的な生態、つまり光合成細菌というのは一体どういった微生物なのかというところからご説明させて頂きたいと思います。
 次に、本発表においてここが中心的なお話になってくるのですが、水処理や農業など、様々な分野でEMが活用されて効果を上げています。ところが、この光合成細菌自身は単体の菌でも実は農業や水処理などで利用され、研究されてきた菌であり、特に水処理に関しては30年以上も前から活用されている菌であるということを確認し、理解を深めて頂きたいと思います。
 最後に、EMの中に光合成細菌が存在することでどういうメリットがあるのかを簡単にお話しさせて頂きたいと思います。



 光合成細菌と申しましても、広い範囲に渡っています。光合成細菌のことを聞いたことのある方は、それはおそらくそれはシアノバクテリアのことではないかと思います。シアノバクテリアというのは、地球上にまだ酸素がない時代から酸素がある時代への変遷に貢献した光合成細菌です。つまり、太陽光からエネルギーを得て、それで光合成を行い、酸素を生産して現代の地球上に酸素を供給してくれたということで、地球科学的にも非常に重要な菌です。 
 本日扱います光合成細菌はこのシアノバクテリアではなくて、紅色細菌、緑色細菌に分類されています。少し難しいのですが、これは光栄養細菌と呼ばれ、酸素が発生する光合成細菌が出現する前に光合成を行っていた細菌なのですが、実はこの紅色細菌、緑色細菌からシアノバクテリアに進化して、それから地球上に酸素が供給されるようになったという歴史を持っています。この紅色細菌について、次のスライドでもう少し詳しく見ていきたいと思います。



 この紅色細菌はさらに細かく分類されていて、紅色硫黄細菌と紅色非硫黄細菌に分かれています。大雑把に申し上げますと、硫黄化合物の代謝形態の違いによって分類されています。ここでは、大体こういったものがあるのだということを押さえておいていただければよいと思います。
 どちらに注目していくかというと、この紅色非硫黄細菌の方を中心に見ていきたいと思います。
 まず、この紅色非硫黄細菌の生息場所ですけれども、地球上の至るところに存在しています。特に、湖沼、下水処理場など、水のある場所が大好きな菌で、大体そういった場所に生息しております。
 大きさはこう書いてもパッとこない方が多いかと思いますが、まずどんな形をしているかというと、桿菌といって長方形の形をしています。短い方が0.6〜0.9マイクロメーター。このマイクロメーターというのが1ミリの千分の一の大きさになります。長い方が1.2〜2.0マイクロメーターでとても小さく、当然顕微鏡を使わないと見えないような細菌です。
 かなり専門的な話になってきますが、この細菌群にはロードシュードモナスやロドバクターといった属が含まれています。
 基本的にこの紅色非硫黄細菌は通性嫌気性菌で、またカロチノイドという色素を持っているので、黄色から紅色、濃い紫に近いような色に見える細菌です。特にこれから扱うのは、EM3号をご存じかと思うのですが、濃い赤色の菌です
 EMの中に含まれている光合成細菌は非常に高い運動性を持っています。映像の方をお願いいたします。



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これは400倍で撮影した画像ですが、非常に速く動いているのが分かると思います。これが1,000倍ですが、鞭毛を持っていて、これをものすごい速さで回転させながら運動しています。また、ロゼットといって、少し栄養条件が悪くなるとこのように固まる性質を持っているというのもこの光合成細菌の1つの特徴です。次に、これは10,000倍ですが、電子顕微鏡を使って見ると鞭毛まで見えます。この髪の毛みたいなものが鞭毛で、光合成細菌はこれを一生懸命回転させながら運動しています。



 次に、光合成細菌はどのようにしてエネルギーを獲得しているのかを説明していきます。基本的には光を利用して代謝を行うのですが、貯蔵物質として多糖やPHAといって生分解性プラスチックの原料になる物質も作ります。光がなくても酸素を使って呼吸をすることもでき、さまざまな条件に適応できるという特徴を持っています。無機物も有機物も代謝でき、非常に広範囲の物質を利用することができます。



 次が本日のメインテーマになるのですが、先程ご紹介申し上げた光合成細菌が一体どういった分野に応用されているのか、また、どういった分野で発展する技術として研究されているのかを紹介したいと思います。



 まず、水処理です。これは最も光合成細菌が利用されてきた分野です。光合成細菌で水処理を行うことの利点は、光合成細菌は有機物の除去能力が高いということが1点挙げられると思います。また、活性汚泥法などではある程度BODを落としてから処理しなければいけないのですが、光合成細菌を利用した水処理法では希釈なしでそのまま処理することができるという特長があります。また、地球温暖化の原因になるといわれていますCO2(二酸化炭素)の発生量が非常に少なくて済むという特典もあります。
 さらに、この光合成菌体は先程も少し紹介させて頂いたと思うのですが、生分解プラスチックの原料となる物質が蓄積されており、有価物として回収するということも可能とされています。また、様々な物質を代謝することができ、悪臭の除去にも有用であるということがいえると思います。ただ、この光合成細菌を用いた水処理には欠点もありまして、単一の菌で処理しますので、他の細菌と一緒になった時に生存競争に負けてしまうという難しいところがあります。
 これは30年前にはかなり盛んに行われていたのですが、活性汚泥法が台頭してきて、今はあまり行われていないのが現状です。ただ、この処理法は非常に有用な部分を持ち合わせていますので、現在再検討をしている研究者もいます。



 次に悪臭除去についてです。ここでは、光合成細菌がどういうメカニズムで悪臭を除去するかを簡単に見ていきたいと思います。まず、悪臭の発生から見ていきたいと思います。悪臭は大抵、タンパク質が腐敗し、微生物の嫌気発酵によって分解された結果、悪臭原因物質が発生するところから始まります。光合成細菌はこういった物質を餌として食べて取り除いてしまいます。それを自分の体の一部分にしたり、エネルギー源にしたりして悪臭を除去します。



 次は水素生産です。現在、石油エネルギーの代替エネルギーということで注目されている水素ですが、これは二次エネルギーといって作るのにエネルギーが必要になってきます。また、水素はクリーンなエネルギーなのですが、非常にコストがかかるというところに問題があります。ところが、この光合成細菌を使えば、安価で水素を生産できる可能性があります。また、これは廃棄物から水素生産が可能になるという可能性もありますので、基礎研究が盛んに行われて、次世代のエネルギー源として利用できないかが検討されています。代表的な菌の中には、先程もEM中の光合成細菌ということで紹介させていただきましたロードシュードモナスパルストリスもいます。
他にはどういったものから作ろうとしているかというと、牛糞の発酵産物や都市下水汚泥から処理して水素を作るという研究も行われています。



 次に、光合成細菌は有用な物質を生産するという特性も持っているので、これを大量に培養して有用な物質を抽出して、商品にしようという研究も行われています。
 メリットは、大量に培養することが可能で安価ということが挙げられると思います。
 どういったものが生産できるかというと、ポルフィリンや、ユビキノン、ビタミンB12などがあります。ポルフィリンは肝臓薬に用いられたりしています。こうした医薬品やビタミン類を作ることが可能です。
 


 畜産への利用ということで2つの研究報告を紹介させていただきたいと思います。まず1つ目は京都大学の小林先生の研究です。産卵用のニワトリの飼料に光合成細菌の菌体約1万分の1を噴霧して食べさせた、という研究です。
 産卵率がおおよそ15〜20%アップしたといった結果と、卵の中の特にビタミンAの含有量が増えたという結果が報告されています。
 次は鳥取大学の平山先生の研究です。飲み水として光合成細菌菌体希釈液を与えると、産卵した卵は各種ビタミン類の含有量が増大したという結果が得られています
 ユビキノンは普通卵には含まれていないのですが、含まれるようになったという結果も出ています。さらに、コレステロールの含有量が減ったといった結果も得られています



 次は水産です。水産も畜産と同様に、光合成細菌の菌体を添加したところ産卵率がアップしたという結果と、金魚や赤貝、コイなどの稚魚に与えたところ、生存率や体重が増えたなどの結果が得られています



 次に農業です。まずメカニズムから見ていきたいと思うのですが、農業では例えば光合成細菌の菌体を施用すると、水田や畑の中の光合成細菌の密度が向上します。そうしますと、アミノ酸や核酸が供給されます。またこの光合成細菌密度の上昇の結果、土壌中の窒素固定菌とともに窒素固定が盛んになり、窒素源の供給という面でも非常に大きな役割を果たしています。さらに、この光合成細菌は有害な物質を除去するという特徴もありますので、病気の減少につながってきます。光合成細菌を添加すると、拮抗菌、有害菌に対する拮抗性の放線菌などが増えてきて、有害菌の密度が減少するという効果があります。その結果として、土壌が肥沃になって、果実が充実して、収量も上がり、味も品質も良くなってくるという報告があります。



 これが最後のスライドですが、今までご紹介させて頂いたように、光合成細菌は農業や水処理など、多くの面で非常に有用であるということがお分かりいただけたと思います。ただ、水処理のところで少し申し上げたと思いますが、他の有害な菌が入ってきた場合に少し弱いところがあります。そういったところが難しいのですが、EMでは乳酸菌、酵母と共に光合成細菌が働くことで、それぞれが共生して働き、さらに有害菌と拮抗性のある菌が誘導されるということがEMを使う一つのメリットになります。
 EMフェスタでもご覧になったと思うのですが、EMによる河川の浄化や農業による作物の収量増加という効果は、今まで見ていただいたような光合成細菌の力が中心となり、乳酸菌、酵母と協力しながら、こうした効果が現れているということがいえると思います。以上で発表を終わらせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

新谷
 松下さん、発表ありがとうございました。今日は皆さんに初めてEMの中の、光合成細菌の実際の映像や電子顕微鏡写真を見ていただいて、これが光合成細菌だというのが分かっていただいたと思います。1,000倍で見て、ものすごく速い動きをしているので、いかに光合成細菌がエネルギーを持っているかというのが分かります。つまり、このエネルギーが波動などの比嘉先生のおっしゃっている理論につながっているのではないかと考えております。光合成細菌については、今、世界中で多くの研究者の方が研究されていて、競争の激しい分野でもあります。特にこれからのエネルギーである水素の発生、それから、30年前に流行った汚水処理の分野ではもう一度光合成細菌を見直して、光合成細菌で汚水処理をしようという動きがあります。それと、光合成細菌の赤い色はカロチノイドですけれども、実は天然のカロチノイドはなかなか取れにくのです。それが、光合成細菌を利用するとできる。そして、この光合成細菌の出すカロチノイドは抗酸化力が強いという研究論文が出てきているので、これからは、いかに光合成細菌から抗酸化能力の強いカロチノイドを出すかがポイントになってくると思います。
 それと、松下さんから発表がありましたように、光合成細菌単独でもかなりの報告が出ているのですけれども、実際、河川の浄化などの現場では光合成細菌単独の商品はなかなか伸びていないのです。これは松下さんの報告にもありましたように、光合成細菌単独で施用すると、どうしても他の菌に負けたり、光合成細菌はもともとメタン細菌などと相性がよいので、他のちょっと悪い菌と組んでしまうというところがあります。また、光合成細菌自身が動物性プランクトンのえさになってしまうので、なかなか密度を高められないということもあります。
 普通、この光合成細菌はpHの低いところでは生存できないというのが今の一般的な理解ですが、私どもが研究している中で、実は光合成細菌にとってはpHが低いというのはかなり厳しい状況ですけれども、このパルステルスの仲間はちょっと強い形になって、形態を強い形態に変えて、つまり、生き残るようになるということがわかってきました。また、EMの中では光合成細菌は形態を変えて存在しているので、通常の方法でやると取り出しにくいということも分かってきました。
EM中で光合成細菌を強くなった状態にして、それを海や河川にまくことによってほかの微生物に負けてしまわないようにするとか、かなり環境の厳しいところにも光合成細菌を送り込むということができるようになるとかが、EMの利点ではないかと考えております。
 この光合成細菌については、皆様もすごくご興味を持っておられて質問もあるかと思いますけれども、先に次の松本さんの発表に移らせていただいて、後半に質問の時間を確保したいと思います。
 2番目のパネリストは松本さんです。松本さんは琉球大学で比嘉先生の研究室で修士号を取得され、現在EM研究機構研究部でEMの研究、特に乳酸菌関係を研究されています。発表のタイトルは「乳酸菌、酵母の関係から見たEM活性液のポイント」です。昨年も「EM活性液の考え方と作り方」というテーマで星野さんに発表していただきましたけれども、去年からEMによる河川や海の浄化活動が日本中に、ボランティアやUネットの皆様のおかげでどんどん広がっています。そして、EM活性液の利用も飛躍的に増えています。道頓堀側浄化で見られるように1度に170トンの活性液を仕込むようなケースも出てきたので、これから皆様が現場で大量にいかに速く活性液を作るかということが課題になってくると思います。そこで本日はその活性液を作る上でのポイントを、乳酸菌と酵母の視点、つまり、微生物の視点から見ると、こうすれば活性液はうまく作れるというのが分かると思います。その点について松本さんに発表していただきます。松本さん、お願いします。

EMフェスタ2004 専門分科会
EM活性液のポイント 酵母、乳酸菌の働きについて
松本 潤(まつもと じゅん) EM研究機構

プロフィール:
昭和53年8月8日生まれ 長野県小諸市出身
琉球大学農学部修士課程卒業後、H15年EM研究機構に入社 
現在に至る


松本
 はじめまして、EM研究機構の松本と申します。タイトルは「乳酸菌、酵母の関係から見たEM活性液のポイント」です。いつも皆さんはEM1号からEM活性液を作られていると思います。EMは、見ただけでは茶色い液体ですので、中に菌がいるとは、想像しづらく、その結果、微生物のことを考えずにEM活性液を失敗させてしまう等の経験がある方もおありなのではないでしょうか。今回は特に新谷の方から説明があったように、乳酸菌、酵母という微生物の点からEM活性液をどうやって作ったら失敗せず作れるかを、簡単ではありますが説明させていただきます。




 本発表の目的です。始めにEM活性液の特徴をおさらいし、良いEM活性液とはどういうものか、また、その特徴について説明します。次に、EMの中で中心的な役割を果たしている乳酸菌、酵母について、簡単な説明をさせていただきます。光合成細菌もEMを構成する中心的な微生物ですが、先ほど松下の方から説明がありましたので、今回は乳酸菌と酵母を中心に活性液について説明させていただきます。




 まず、EM活性液について説明します。EM活性液はEM1号中の微生物を、糖などのえさを加えて菌を活性化させたものです。そのためEM1号とEM活性液の一番の違いは、何と言っても菌の数が違うということです。この図を見てください。EM1号はえさがなく菌が休眠している状態なので、活動している菌が非常に少ないです。それに比べて、EM活性液は糖蜜や砂糖など、微生物のえさが豊富なため、非常にたくさんの菌がいます。
 この表は、EM1号とEM活性液の違いを大まかに示したものです。品質は、酵母、乳酸菌、光合成細菌がバランスよく含まれているか、またその液を種菌としてEM活性液を作ったときにpH3.5以下になるかを指標としています。EM1号は酵母、乳酸菌、光合成細菌がバランスよく含まれていますが、EM活性液の場合、温度、水質、雑菌、基質の種類などにより、微生物の層が大きく変わってしまい、品質を安定させるのは難しくなります。そのため、品質の面ではEM1号に比べると劣ります。微生物の活性度は、EM活性液が高く、EM1号は休眠している菌が多いので活性は低くなります。また、保存性については、EM1号は1年程度保存がききますが、EM活性液は品質に差があるので保全性があるとはいえません。




 このEM活性液の品質を示す指標は、いろいろあり、個人の経験則というものもあるとは思いますが、一般には、どういったものが良いEM活性液かを簡単にまとめて見ました。

 では、良いEM、効果の高いEM活性液とはどういったものかというと

 1つは乳酸菌を主とした有用菌が多く、微生物が活性化状態にあるものです。例えば、土壌などにEM活性液を散布したときに、有機物を分解して腐食を作る、こういった効果は菌自体の働きなので、多くの微生物が活性化した状態にあるものは効果が高いと思われます。

 またもう一つは微生物が作り出した有用成分が豊富なEMです。例えば、悪臭があるところにEM活性液を薄めて散布したときに、悪臭がすぐ消えたという体験をされた方は多いともいます。これは、微生物自身が悪臭を食べるというほかに、菌が作り出した酵素が直接悪臭に作用しているためです。このような酵素や有用物質が豊富なEMほど効果が高いと思われます。このように、EMの働きは微生物自身と微生物が作り出した酵素の量が品質に大きな影響を与えます。

 その判定基準として現場の方は、においや色など、いろいろな基準でEM活性液を評価されていると思います。しかしその中でも1番客観的で簡単なのはご存知の通りpHで、pH3.5以下なら良いEMというのが知られています。




 では、なぜpH3.5以下のEM活性液がいいのを説明したいと思います。まずpHは水の性質を示す指標の1つで、水が酸性かアルカリ性のどちらに傾いているかを表します。

 例えば、レモン水や石けん水。レモン水は酸っぱく、酸味があり、リトマス紙を赤くします。このようなものを酸性物質といって、石けん水のようにぬるぬるして苦みがあり、リトマス紙を青色に変えるものをアルカリ性といいます。

 pHは、酸性でもアルカリ性でもない中性の範囲をpH7とし、それより低いものは酸性、高いものはアルカリ性としています

 EMのpHがなぜ3.5以下がいいかと言うと、このような強酸性になるとEMを劣化させる雑菌が繁殖できなくなるためです。通常、空気中や人の周りにいるいろいろな雑菌はpH7前後の範囲で繁殖しているので、それより低いpH3.5以下になると生育できなくなります。そのためEMの保存性が上がるほか、雑菌の繁殖による有用成分の減少もなくなります。

 EMの場合、乳酸、酢酸などの酸によってEMのpHは下がります。そのpHの低下には特に乳酸菌、酵母が非常に大きくかかわっているので、次は乳酸菌、酵母についてと、その働きを説明したいと思います。




 はじめに乳酸菌とその働きについて説明します。乳酸菌とは炭水化物、ブドウ糖や、糖蜜などの糖分を食べて、乳酸などの酸をたくさん作り出す微生物です。




 乳酸菌はいろいろなところで見ることが出来ます。例えば、口の中や、胃や腸の中、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、肉製品、また加工食品などです。乳酸菌はその生育環境によって特に3種類に分けることができ、

 まず、1つはヨーグルト、バター、チーズなどにいる乳酸菌。もっとも良く知られている乳酸菌です。

 2つ目は、植物系乳酸菌。サイレージや漬物、キムチなどで生育しているタイプの乳酸菌です。

 そして3つ目が、腸管系乳酸菌。人の腸の中で活動する乳酸菌です。乳酸菌は生育環境によって主に、この3種類のタイプに分けることができます。

 その中でもEMで見られる乳酸菌の多くは、サイレージやキムチなどでよく見つけられる植物系乳酸菌で、糖蜜の代謝能力に優れた特長を持っています




 これは代表的な乳酸菌の写真です。肉眼では、小さすぎて見えませんが、顕微鏡を使うと、EM活性液中のさまざまな乳酸菌を観察できます。左上のはラクトバチルス・ブルガリクスといって、ヨーグルトなどで見られる乳系乳酸菌。こちらのラクトバチルスカゼイやプランタラムは、植物系乳酸菌で、EMの中で見られる乳酸菌の多くはこのタイプです。このように、乳酸菌といっても形や性質が違うさまざまなタイプの乳酸菌が存在します。




 つぎに酵母について説明します。酵母は乳酸菌、大腸菌などに比べて非常に細胞が大きいのが特徴です。細菌の大きさが1マイクロメーター程度であるのに対して、酵母はその大きさの10倍前後あり、分類的にはカビやキノコの仲間とされています




 酵母が古くから人の生活と密着に関係しているのは、よく知られています。ワイン、日本酒、ビールなどのお酒に含まれるアルコールを作っているのもすべて酵母です。また、パンを作ったり、サプリメントなどにも最近は使われ、人気の商品となっています




 それでは、EM中で酵母がどのような働きをしているかというと、EMの中での酵母もパンなどを作る酵母と同じで、お砂糖からアルコールであるエタノールと二酸化炭素を作るユ発酵‘をしています




 そのほかに発酵を行う酵母で有名なのは、ビール、ワインなどを作る酵母、パン酵母など、パンを作るサッカロミセス・セレビシアというものがもっとも有名で、酵母と言ったらまずこの酵母が挙げられます。しかし酵母はほかにもいろいろ種類があり、例えば廃水処理に使われるピチア、ブドウ糖の生産やでんぷん廃液の分解に使われるサッカロミコピシスという酵母や飼料酵母に使われるカンジタ・ユチリスなど、いろいろな種類の酵母があります。


 この、酵母、乳酸菌が、実際にEM活性液の中で、どのような働きをするかというのを実験してみました。試験は、EM中の酵母、乳酸菌のEMに占める割合が変わることで、活性液の品質の指標となるpH 、糖分の指標であるBrix、また酵母、乳酸菌の数にどのような影響を与えるかについて、調べました。試験手順は、まず、この水の中に糖を加えます。

 このように糖を加えて

 次に、乳酸菌だけを増やした液体を加えます。

 その次に、酵母だけを増やした液体を加えるのですが、この酵母を加える時期を、乳酸菌と同時に加える0日後、1日後、3日後、5日後と日数をずらして加えます。日数をずらすことによって、乳酸菌と酵母の菌数が変わります。その違いによってどのような影響が出るかというのを試験しました。




 これは、酵母の添加時期の差がpH に与える影響について示した図です。上の図は21日間のpHの変化で、下の図は最初の6日間のpH の変化について拡大した図です。まず見ていただきたいのが、この酵母と乳酸菌を同時に加えた0日目区です。これは21日間、つまり3週間たってもpHが3.6ですから、pH3.5以下の基準に達していないのがわかります。一方、1日後、3日後、5日後区では、反対に酵母添加が早いほど、このようにpHの低下が低くなっていることが分かります。これはどういうことかというと、酵母の数が増え過ぎた場合、酵母は、乳酸菌のえさをまで食べてしまうため、乳酸菌が十分な有機酸を作れなくなりpHは低くなりません。しかし、ある程度乳酸菌が増えた状態で酵母を添加すると、今まで乳酸菌が食べることが出来なかった物質を酵母が食べやすい物質に変えてくれます。その結果、乳酸菌の出す有機酸の量が増えるので、pHの低下が促進されます。つまり、酵母と乳酸菌はpHの面から言っても非常に良く関係し合っていることが分かります。




 これは酵母添加時期の差が、糖蜜のブリックス(糖度)に与える影響について、示したものです。上のグラフがブリックス、下のグラフは酵母の数を示しています酵母の添加が早いほど糖分の減少が速いことが分かります。一方、それに対応するように酵母の数も、加える時期が早いほど増加しているのが確認できます。酵母は糖蜜をよく食べることがわかります。




 これは、酵母添加時期の差が乳酸菌数と酵母数に与える影響について示した図です。上の図が酵母の変化、下の図が乳酸菌の変化です。まず、酵母は先ほどの図と同じで0日後、1日後、3日後、5日後と、添加が早いほど爆発的に増えて、その後、急激に減っているのが分かります。しかし乳酸菌の数は酵母添加時期が遅いほど少なくなり、5日後、3日後、1日後、0日後と順にゆるやかになっているのが分かります。これも、酵母と乳酸菌のエサの競合が関係しているためです。




 酵母と乳酸菌はEM中でお互いに非常に大きく影響を及ぼしあっています。
この写真は、上がpH3.5以下のEM活性液、下のものが、pH3.5を切らない活性液の顕微鏡写真です。pH3.5以下のEM活性液は、円形の酵母と棒状の乳酸菌がバランスよく含まれていますが、pH3.5 をきらないEM活性液は酵母だけが優先しているのがわかると思います。このように酵母が増えすぎると、乳酸菌のエサまで食べてしまい、EM活性液のpHが3.5以下にならない原因になります。
 その一方で、乳酸菌だけを加えても、糖蜜のpHを下げるのは、非常に時間がかかってしまいます。理由は、先ほどの実験結果からわかるとおり、EM1号に含まれる乳酸菌は、酵母の代謝物も利用しているためです。




 EM活性液のポイントです。乳酸菌、酵母などの微生物の観点から指摘すると、まず、pH3.5以下の安定したEM活性液は、作成初期の乳酸菌数が酵母数の100倍以上であることがバランス良くpHを下げるポイントになります。

 このように雑菌が多い場合も、pHを下げる有機酸や有用な物質が食べられてしまい、pHが上昇して腐敗する原因にもなります。




 このように菌のバランスを整えるためには、通常EMを培養するように、えさや空気、水分、温度など、いろいろな影響が微生物に作用して菌のバランスが変わってきます。

良いEMを作るためにはまず十分な糖分が微生物の増殖に必要です。特に乳酸菌、酵母は糖から有機酸やアルコールを作ります。そのとき十分な糖分がないとpH を下げる有機酸や有用物質が生産されないため、腐敗しやすい原因になります。また、微量のミネラルも必要で、特にミネラル分の少ない市販のグラニュー糖でEM活性液を作る場合は効果があるといえます。




 これは米ヌカをえさとして添加したEM米のとぎ汁発酵液とEM活性液の違いがpHと微生物数にどのような影響を与えるかを示したものです。赤色がEM活性液、青色がEM米のとぎ汁発酵液、つまり米ヌカを添加したものです。42日間測定しましたが、米のとぎ汁区は、米ヌカを添加することでpHがEM活性液よりも低くなり、また微生物も42日間を通して非常にEM活性液よりも高い活性のまま推移していることが分かります。

 このように米のとぎ汁活性液は、菌の活性が上がり、1カ月以上たってもEM活性液より常に高い菌数を保ち続けました。

 この理由として、米のとぎ汁活性液には、米ヌカのミネラル分と、米ヌカ由来の微生物があげられます。このミネラルの効果と微生物の働きでpHをより下げていることと考えられます。




 菌のバランスを整えるポイントとして水の違いも挙げられます。きれいな水、大腸菌などの雑菌が少なくてミネラル分が豊富な水が良い水です。天然水、井戸水は理想的ですが、現在の多くの井戸水は雑菌などに汚染されているケースも多く、その場合は、失敗の原因になるため、じゅうぶんにきれいな天然水、井戸水が手に入らない場合は水道水を使った方が失敗せずにEM活性液を作ることができます。




 EMの培養温度は、人と同じ30度から40度付近の温度が最も適しています。EMには、複数の微生物が含まれていますので、少しの温度の違いで、EMを構成する微生物の優先度が変わる場合があります。例えば培養温度が極端に低いと、比較的高温を好む乳酸菌よりも酵母の方増えやすくなります。また、EM活性液作成の際に、空気の入れ過ぎは厳禁です。なぜかというと、EMのpHを下げる有機酸は、密封して空気が少ない条件で作られやすいためです。空気が多いとpHが下がりにくい原因になるほか、雑菌が侵入して活性液の質が悪くなるということもあります。




 これは微生物の増殖変化全般について示した表です。微生物は、最初に誘導期、細胞が栄養源をもとに活発に動き回る対数増殖期を経て、定常期、死滅期と、このようなサイクルで増殖します。




 EM活性液についても同様で、作り始めてから5日から10日の間で非常に速い速度で増え、その後、安定する定常期を経て、だんだん数が減っていくというサイクルをとります。そのため、EM活性液を効果的に使うには、微生物の活性の高い期間、つまりEM活性液作成から1カ月程度を目安に使うのがいいのではないかと思われます。





 以上、乳酸菌、酵母の関係から見たEM活性液のポイントをまとめます。EM活性液は光合成細菌、乳酸菌、酵母を中心とした微生物が活性化している液です。EMの効果は菌菌自身の作用と菌の作り出す抗酸化物質の働きで効果を発揮します。
これらを作り出す乳酸菌、酵母、光合成細菌は温度、密封条件、エサ等の環境によって、優先する菌も全く変わり、その結果、EMの質に大きな影響を与えます。EM活性液を作るときは上記のことを考慮しつつ、かつ、乳酸菌の密度を高め、pHの低下、有機酸による雑菌の抑制、有用物質の確保をまず第1に作るのが失敗しないコツの第1だと思います。  
通常言われていることと、あまり変わりがなく、新鮮味に欠ける発表だったかもしれませんが、この発表で「EMは微生物である」ということが少しでも理解しやすくなれば幸いであると思っております。ご清聴、ありがとうございました。

新谷
 松本さん、どうもありがとうございました。きょうの発表で分かっていただいたのは、pHを下げるというのはシンプルに言えば、乳酸菌をたくさん増やして乳酸を増やして、それでpHを下げています。ですから、活性液を作るときに、微生物からの視点で見ると、乳酸菌をいかに増やすか、その乳酸菌の中でもEMの中心の乳酸菌はカゼイやファーメンタムなどの乳酸菌なので、それを増やす。ときどきヨーグルトなどを加える方もおられるのですけれども、ブルガリクスは牛乳では増えるけれども糖蜜では増えにくいということを分かっていただいて、米ヌカなどについている植物性の乳酸菌を入れた方がいいということです。
 それと、このpH3.5ということをよく聞かれます。これは例えば、東京都の健康安全研究センター、食品の苦情Q&Aのホームページや冊子に掲載されているんですけれども、昔、紅茶キノコがはやって消費者から「紅茶キノコというのはいろいろな菌が入っているみたいですが、危険な病原菌は存在氏しないか」という質問に対して、「紅茶きのこのpHは3.1以下である。このため各種病原細菌を紅茶きのこの中に入れても48時間以内に死滅するので、病原菌は通常存在しない。」つまり、飲んでも安全ですという回答をちゃんと出しています。
 あと、やはり、こうして見ると乳酸菌と酵母の関係はすごく微妙です。pHを下げようと思うと、酵母がちょっとあった方がいいです。ただし、酵母が増え過ぎるとpHが下がらない。また、酵母はほかの菌のえさにもなるので、酵母が増え過ぎるとほかの雑菌が増えやすいということになります。通常の現場では、活性液を作るときには、皆さん酵母と乳酸菌の添加時期を変えられないので、やはりそういった時には知っておいていただきたいのは、乳酸菌は嫌気性菌、酵母は好気なので、活性液を作る時にちょっと油断して1日ふたを開けたままにしていると、あっという間に酵母が増えてしまいます。表で見ていただいたように、酵母が多い状態で始めてしまうとpHが下がらないとか、温度が低いと酵母の方が先に増えてしまうのでpHが下がらないという状態にもなります。
 では、時間が少しあり、いい機会なので、ぜひ質問などのある方はお願いします。

質問者
 ただいま活性液について、乳酸菌と酵母との関係でご説明いただきましたが、光合成菌が活性液の中でどのような働きをしているか、あるいはその培養する中でどういう働きをしているか。例えば、よく我々が聞いているのは、活性液を太陽に当てたら光合成菌が増える。あるいは、光合成菌が増え過ぎるとちょっと臭いが悪くなる。そういうことを聞いているんですが、そういう点について教えていただきたい。

松下
 EM1号というのは乳酸菌と酵母と光合成細菌がバランス良く含まれているということをまず、おさえておくことが重要です。私どもが指導させていただいているように、糖蜜を加えてきちっと密閉するといったようなことを守り、通常どおり使用して頂ければ問題ありません。ですので、気をつける点は基本的には同じです。

新谷
 少し補足させていただきます。EM1号は顕微鏡で検鏡すると乳酸菌はたくさん見えるし、酵母もちょっと空気を入れるて放置しておくとよく見えるようになるのですけれども、以前申し上げましたように、EMはpHが低く光合成細菌にはちょっとつらい状況なので、形態が変わってじっとしています。ですから、EMを活性液にしたときに光合成細菌も動き出すということになるんです。ただし、活性液には糖蜜しか使わないのでどうしても光合成細菌の増殖は、乳酸菌とか酵母の増えるスピードに比べて遅くなります。ですから、2回、3回と何回も活性を繰り返すと、乳酸菌、酵母だけになってしまうので、特に水の浄化などを目的に活性液を作るのであれば、光合成細菌が少なくなってしまう。ですから大規模の水処理用に大量の活性液を製造するのであれば、私個人の意見としては意識的にちょっと光合成細菌を活性液を作る時に加えた方がよいと思っています。
 それと、においが悪くなるというご質問ですけれども、実は光合成細菌を純菌で培養したものは全然臭くないんです。松下さんが発表したように、この光合成細菌は悪臭物質を除去するので、光合成細菌自身が悪臭を発するということはありません。もし活性液が悪臭を発するとしたら、それは市販されている糖蜜の中にはたくさんの微生物をいてその中の悪臭を発生する微生物が増えてしまったか、活性液を製造する過程で混入した雑菌が臭いを出していると考えられます。ですから、活性液のにおいが悪くなったとしたら、それは光合成細菌ではなくて、雑菌が増えすぎて、それらが作る悪臭物質を光合成細菌が処理いきれなくなった状態と考えていいと思います。

質問者
 その活性液を太陽に当てていると、非常に透明感の出た、ワインと間違うような、非常にほれぼれとするような活性液ができるんですが、これはどういうことか。だから、よく2つあるんです。活性液を冷暗所に保存していた方がいいとか、いや、光に当てた方がいいのだとか、そこらあたりの関連と一緒にご指導いただきたい。

新谷
 光合成細菌には暗いところでも明るいところでも生きのですけれども、例えば長い間放置していた光合成細菌を光のところに置くと元気になります。当然、光をエネルギーとして利用できるので、光合成細菌に関しては明るいところで作るのがいいのです。けれども、私たちが培養する場合は光や温度を調整して一定にできますが、外でやると太陽の紫外線や温度でEMの他の微生物に悪影響を与えてしまったりして臭いが悪くなることがあります。ですから、光合成細菌側の視点から見ると、光を当てることはいいのですが、程度に気をつけることです。それと、ワインのようにクリアになるというのは、1つの原因としては、循環培養していないのでやっぱり菌体というのは沈む傾向にあるので、それでクリアになっているのではないかと思います。
 
質問者
 光合成細菌を、夏の太陽のときが大変良くできるもので、夏に作るわけです。20リットルのポリ容器、四角になったプラスチックの入れ物で作るんですが、秋に入れてもいいのかも分かりませんが、実際に使うのは田植えで水田に水を張ったときに入れるんです。だから、その間はずっと置くんですが、周りに赤いのがついてしまうんです。今の話を聞くと、EMのいわゆる混合液の方がいいような話にも聞こえたんですが、作るときには赤い色になってできたかどうかがすぐ分かるので、私は単独で作っているのです。すぐ混ぜた方がいいのか、でも、EMになると1週間ぐらいの活性液のときがいいということなので、そのへんを光合成細菌を3号で作った場合と、それをEMの中に入れるにはどういう入れ方をすればいいのか。あるいは、保存で、半年ぐらいおくときにどうすればいいか、教えていただきたいと思います。

松下
 まず、半年ぐらい置きたいとおっしゃっているのは、これは光合成細菌のことでしょうか。光合成細菌単体を半年おくことは少し難しいと思います。といいますのは、普通、微生物は特別な施設の中で無菌状態で操作してきちっとやらないと培養できないのです。このEM・1というのは、活性液と糖蜜を混ぜて一般の方でもペットボトルを使って培養できるので、非常にまれな商品というか、なかなか世の中を探しても、「微生物を培養して使ってください」という商品は非常に少ないと思います。ですから、培養施設なしで光合成細菌を培養するとすぐに雑菌に汚染されてしまいますので、現在は私どもの方でも「光合成細菌を培養してください」ということを積極的に勧めることは致しておりません。田んぼで使われるということですが、これはEM活性液とその光合成細菌を併用して頂く形が望ましいかと思われます。

新谷
 ちょっと補足させていただきます。光合成細菌は世界中で研究されているので、光合成細菌単独の施用も間違いなく効果があると思います。光合成細菌を今はアミノ酸か何かで培養されていますか?。1つだけ、松下さんが言っていたように、アミノ酸で培養するときに、ちゃんと管理できないとやはりアミノ酸がほかの雑菌のえさにもなってしまいます。私が光合成細菌の単独培養を途上国などで指導していないのは、教えても管理でずにみんな腐らせてしまうからです。見た目は赤いけれども、すごくにおいが悪い。そうすると、顕微鏡で見ると、あまり増えてほしくない雑菌が大量に増えています。それで、雑菌が増えにくくて安全で確実な、活性液の方の利用を勧めています。もちろん、日本の農家さんのレベルはどんどん上がってきているので、今後こういったEMと光合成細菌の併用というのは出てくると思います。
 あとは、長期間保存すると、光合成細菌の生きた菌という意味での効果は期待できなくなると思いますけれども、光合成細菌が作り出した成分からの効果というのは期待できると思います。ですから、これはレベルが高いやり方になりますけれども、光合成細菌を応用される場合は悪い菌を一緒に増やさないということがポイントになると思います。

質問者
 仙台から来ましたキダと申します。EMだんごの保管というか。夏場に作ったときはうまくできたんですけれども、9月、10月になるとちょっと気温が下がって、雨が降ったということもあり、青カビが出たんです。

新谷
 活性液のことですか?

質問者
 いいえ、EMだんごの方です。温度管理が難しいということです。どういうふうにしたかというと、新聞紙で保温状態にして保湿を良くして一晩二晩で、夏場はすぐ白い糸状の菌が出てうまくできたんです。対策としては、育苗、苗をビニールで囲ったようなもので温度管理をやっぱり30度から40度を保たないと、夏場はいいにしても冬場や秋口は難しいということです。来春からまた、水の浄化ということで今、取り組んでいるんです。
 それともう1点お伺いしたいのは、だんごの保管の1番いい方法を教えていただきたいのと、だんごを作る際のぼかしなんです。活性液もまだ上手に作れないというか、その辺も課題としてあるので、きょうは勉強になりましたけれども、ぼかしの肥料を作るのに農家の方から指導を受けて抗酸化物質をたくさん入れた方がいいということで、今、ちょっと勉強した酵母の量や、具体的に言うと酒かすなどいろいろなものを入れて、より抗酸化物質を入れた方がいいというアドバイスがあったので、その辺もどの程度の兼ね合いか。ちょっとさっきおっしゃっていましたけれども、新聞に乳酸菌、ヨーグルト、納豆菌、イースト菌などでも安価に作れるというのが出ました。コスト的に安くしようと思うとそういうものを入れた方がいいのか、いろいろ教えていただけると。

松本
 まず、EMだんごの作り方についてお答えします。EMだんごは温度や、土の中にいる微生物、EMの量、それから湿度、水分などによって、大変影響を受けますので、発酵に時間がかかる場合は、温度を上げる、アオカビなどが発生する場合は、EMの量を多めに添加する、また、土の質が悪く、雑菌が多い場合は、1回乾燥させてから作ることがポイントです。それからよくある失敗としては、土に加える水分が多すぎて、腐ってしまうことがありますので、べたべたになりすぎないように水分を調整するのは大きなポイントです。
 次にEMぼかしの失敗しない簡単な作り方についてですが、ポイントは、ぼかしの水分調整と、空気が入りにくい密封容器を使うこと、また元気なEM活性液を使うことです。水分が多すぎると腐敗させる菌が増えやすくなり、少なすぎてもEMが米ヌカの中で増えず、良いEMぼかしはできません。適切な水分は米ヌカに対して20〜40%程度の範囲がよいとされています。水分含量20%というのは、米ヌカを手で強く握ると固まりになり、つつくと崩れるぐらいの水分です。私個人の経験では、EMぼかしを密封度の高い容器で発酵できるのであれば、米ヌカを手で握ると、かなり硬い塊になり崩れないぐらい水分を加えたほうが出来の良いEMぼかしになります。
 EMぼかしを入れる容器は、雑菌からEMを守る、EMに含まれる微生物が増えやすいように、なるべく空気の入りにくいものがよいです。またもう一つのポイントは元気のいいEM活性液を使うことです。EMぼかしの材料となる米ヌカには、雑菌がたくさんいます。そのため、菌が元気で活性化していないEMを使うと、雑菌が、ぼかしの中で増えてしまい、その結果質の悪いぼかしになる場合があります。そのため、EMに加える水分には元気のいいEM活性液とえさになる糖蜜を加えて、米ヌカの中でEMに含まれる微生物が増えやすい環境にしてあげる必要があります。以上の3点に気をつければ、特に納豆やヨーグルトなどを加えなくても質の高いEMぼかしを作ることが出来ます。

新谷
 やはり活性液に比べてEMだんごになると、土を使うのでファクターが多くなります。ですから、これも乳酸菌数を高く維持するということがポイントになります。お餅の例で分かるように、冬でも青カビというのは生えますから、カビは低い温度でも増えやすい。ですから、乳酸菌が増えやすい暖かい温度を確保することです。あと、今、言われていた、最近、乳酸菌、ヨーグルトを使って増やすというのがあり、それもよいのですが、ヨーグルトはどうしても乳性の乳酸菌が多いので、なかなか糖蜜では増えにくいことは確かです。
 あと、バチルスの添加はいいと思います。バチルスというのは有機物を食べる能力が強いので、よく働くと思います。自分で作られる時はできるだけいろいろなえさを入れた方がいろいろな菌の種類が増えます。ですから、それはいいことです。乳酸菌を常に増やすことを考えながらほかの菌も増やすということを考えれば失敗することはないと思います。

質問者
 宮城県の気仙沼から来ましたアシカガと申します。松本さんと松下さんに1点ずつお伺いしたいと思います。松本さんに、EMの活性液のphが例えば、2.8とかに下がっていく場合、これは良質なのか。それとも、どの辺でそれは仕切るのか。黙っていると、結構phが下がる場合があるんです。その辺を1つ教えてもらいたい。それから、松下さんには、うちの方はもうかなり寒くなります。そうすると、米のとぎ汁発酵液をお日さまに当てるんです。廊下に置いておくと結構日中は暖かいものですから、そうすると光合成細菌が出ると思うんですけれども、その辺は構わないのかどうかを教えていただきたいと思います。以上です。

松本
 pHが低い方がより良質のEM活性液かどうかということでしょうか。

質問者
 どの辺まで下がっても活性液として良質なのか、それを教えていただきたい。

松本
 EMのpHは、高ければ問題になりますが、低すぎる分には問題なく使うことが出来ます。
EM活性液を作るときに、エサとして加える糖分が多いと、EMによって作られる有機酸や有用物質が増えるので、pHの低いEM活性液ができます。私の経験ではpH 2.5くらいまでpHが下がった経験がありますが、pH1ですとかそれ以下のものは見たことはありません。というのもpHを下げる有機酸は乳酸菌によって作られるのですが、あまりにpHが低くなると、乳酸菌にとっても良い環境ではなくなってきますので、ある程度までしかpHは下がらないからです。

質問者
 分かりました。

松下
 発酵過程で光に当てて、光合成細菌が増えても大丈夫なのかというご質問ですが、もちろん構いません。特に寒いところでしたら、日に当てることによって温度を上げて、乳酸菌も一緒に増やすということが重要なポイントだと思います。

新谷
 では、時間がありますので、最後の質問でお願いします。

質問者
 瀬戸内海で浄化活動をしております。量的にたくさんいるものですから、50トンぐらいタンクを用意して、1万倍から2万倍にしているわけです。そうすると、当然、光合成細菌が弱いのではないかと思い単独で光合成細菌を作って補充をしているということもやっているわけですが、結論的にはその3号も一緒に作る方が無難だと教えていただきました。しかし、大量に作る、2万倍にもするということになると、光合成細菌が少なくなるのではないかという、その辺が心配です。
 そして、最終的にはこれはお願いですけれども、全国の皆さんが活性液を作っていらっしゃって、何にしても活性液が1番もとになりますから、いい活性液かどうかを、それぞれ闇の中を手探りで分からないままやっているんです。いいものかどうかをEM研究機構の方に送ったら調べてくれて、どの程度いいものができているか、どんなふうにしたらもっと良くなるかというのを教えていただけるような方法も考えていただけるかどうか、これもあわせてお願いします。

新谷
  どうもありがとうございます。光合成細菌を積極的に入れていくということはすばらしいことだと思います。
 品質検査についてですが、EM研究機構も新しい本社に変わって実験室も広くなり、設備も充実してきました。
 近い将来には皆様が製造した活性液やボカシ中の微生物を分析するサービスを提供できるようにしたいと考えています。
 皆様、本日は本分科会に参加していただきどうもありがとうございました


 コーディネーター
 新谷 正樹(しんたに まさき) EM研究機構
 プロフィール:
  1965年 兵庫県尼崎市生まれ
  1988年 筑波大学農林学類卒業
  1988〜1990年 青年海外協力隊員としてホンジュラスにて植林を指導
  1994年 琉球大学大学院農学研究課卒業
  1994〜1997年 アジア・太平洋自然農法ネットワーク技術指導員
  1997〜2000年 コスタリカ・アース大学客員教授
  2001〜2002年 米国ミズーリ大学農学部 客員研究員
  2002年〜 EM研究機構海外部米州事業部担当 現在に至る

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