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EMフェスタ2003 専門分科会
曽川 和則(そがわ かずのり) 長崎県平戸市立中津良小学校教諭(研究主任)

プロフィール:
昭和40年7月18日生まれ、長崎県平戸市出身。
広島大学大学院学校教育研究科社会科教育専攻修士課程修了。平成2年長崎県公立小学校教員となる。平成11年より3年間,香港日本人学校に勤務し,現在に至る。


曽川
 座らせて発表させていただきます。よろしくお願いします。

 
 (ビデオ上映中)
 
 −− 昔の中津良川はこぎゃあ太かウナギがようけ捕れとったとばい。
 
 −− 私たちが子供んころは、この中津良川に足からどぼーんて飛び込んで泳ぎよったとよ。

曽川
 地域の高齢者との触れ合い集会の中で伺ったお話が、今の私たちの活動の始まりでした。高齢者の語る昔話に目を輝かせ、耳を傾ける子供たち。
 
 −− おじいちゃん、おばあちゃんのごと、僕たちもこの中津良川で遊びたか。
 
 (ビデオ終了)

曽川
 近くて遠い存在であった中津良川に子供たちの素朴な思いが注がれ始めた瞬間です。子供たちの願い、夢が、ふるさとの輝く川を呼び戻す本校中津良川プロジェクトとなって動き出した瞬間です。


 会場の皆様、こんにちは。私は長崎県平戸市立中津良小学校の曽川和則と申します。



 本日はこの中津良川に込められた子供たちの思いが一つの点となり、地域住民との交流や地域、他校との連携となって膨らんだ本校中津良川プロジェクトについてご報告致します。



 私たちの住む中津良の町は長崎県の西端平戸市にあり、国道383号線沿いに広がる田園の里です。春には町を眺望する山あいからヨモギやカカラの葉が柔らかな春風に乗ってその香りを漂わせ、秋には山深く分け入ると薄紫色の花を付けたイトラッキョウが見られる自然豊かな町です。国道と競り合うかのように町の中央を平戸三大名峰慈眼岳を水源とした中津良川が流れ、昔からこの川は中津良地区住民の生活の基盤でした。



 かつてはこの川の水は飲み水や風呂の水に使われ、川にはいつも子供たちの声がはじけていたそうです。川は子供たちの遊びの場であり、学びの場であったのです。



 しかし、この川も時代と共にその様相を変え、やがて川から子供たちの声が消え、エビやカニ、メダカまでもがその姿を消してしまったのです。高齢者が語る中津良川はもうそこにはありません。生活の源だった川が今や生活排水の受け皿となり、多量のごみを抱えながら寂しく海に流れ込むベルトコンベヤーとなってしまっていたのです。



 中津良小学校ではこの中津良川がどうしてこんなに姿を変えてしまったのか、その原因を調査し、昔の遊び場、学びの場を取り戻すための取り組み、中津良川プロジェクトを発進させました。



 本校ではこれまで中津良の町の環境美化活動に取り組み、ごみ拾いや空き缶拾いなどの活動を進めてきました。しかし、美化活動だけでは問題の根本的な解決にはなりません。そこで、子供たちは国土交通省河川局が示す水生生物指標により、中津良川の汚染度判定に着手しました。この調査によると、中津良川の上流はカゲロウやカワゲラ、トビケラなどのきれいな水を表す生物群が多く、下流ではスジエビ、カワニナやヒル、ミズムシなど、少し汚い川あるいは汚い川を表す生物群が多く見られることが分かったのです。



 この違いはどこから来るのか。子供たちは何度も川へ足を運び、ついにその原因が川へと注ぎ込む排水口、すなわち家庭排水にあることを探り出しました。



 家庭から毎日流れ出すお米のとぎ汁やお風呂の残り湯、排水口が川へとつながるその先端はヘドロが蓄積し、悪臭を漂わせています。「どうにかならないかな」という子供たちのつぶやき。インターネットを駆使した情報収集、書籍の検索、中津良川上流に位置する平戸高校との情報交換、いろいろなことに取り組みました。そして出会ったのがEMです。EMで有明海がよみがえったという情報や、熊本県河内川の再生、愛知県六斗目川の再生活動を知り、環境浄化にまで視野を広げる必要性を実感した子供たちは、EMを中津良川プロジェクトの手段として活用していく取り組みを始めたのです。



 まず、EMの実態と活用事例を学ぶために本校に研究者をお招きし、EM学習会を開催しました。河川や海洋汚染の原因であるお米のとぎ汁がEMにより環境を浄化する資材に変身することを知った子供たちは、次の日からペットボトルに入れたお米のとぎ汁を大事そうに抱え、登校するようになりました。その真っ白い液が帰る時にはEM発酵液となってチョコレート色に変わっていることに地域の人たちもたくさんの関心を寄せてくださいました。



 更に、学校では高齢者との触れ合い集会、あるいは、授業参観の折におうちの方へお米のとぎ汁EM発酵液の効果を伝え、講習会を開催し、家庭や地域でも使っていただくようにお土産として配布してきました。また、学校の日課の中に位置付けたEMタイムの中でEM発酵液を製造し、川へ投入する活動にも取り組みました。子供たちが自主的に発行するEM通信も中津良地区の全家庭に届けられました。



 徐々に子供たちの地道な活動が地域の人々の心に、中津良の町に浸透し、学校を訪れ、EMや中津良川の話をされる方々が増えてきました。学校がEM活動の発信基地となって地域にその輪を広げていったのです。この動きが子供たちと家庭、地域とを結び付け、地区の行事までも変える力となりました。



 平戸市南部地区では年4回地区住民を挙げてクリーンリサイクル活動に取り組んでいます。これまで新聞紙や段ボールの回収で終わっていたこの活動を、中津良地区では区長さんをリーダーとする中津良川クリーン作戦実行日としました。子供たちと地区住民が力を合わせて中津良川をよみがえらせる活動です。本校中津良川プロジェクトが地域拡大を遂げたこの活動では、川の清掃活動を行ったあと、中津良川にEM発酵液をじゃぶじゃぶ流します。



 第2回目の中津良川クリーン作戦では、福岡県柳川で行われた有明海環境サミットでその効果と作り方を学んできたEM泥団子を子供たちが試作し、中津良川に投入しました。



 第3回目のクリーン作戦では、中津良川上流でEMによる環境浄化活動に取り組んでいる平戸高校とのタイアップが実現し、点が線となる学校間連携が築かれました。



 クリーン作戦実行の1週間前に本校児童と平戸高校の生徒で作り上げたEM泥団子3千個と、発酵液を中津良川の三つのポイントで投入しました。



 3回目のクリーン作戦を実行しながら「おや?」と思ったことがありました。それは、中津良川に少しずつ変化が見られているということです。川から濁りやよどみが消え、川面にコイの姿がはっきりと見られるようになったことです。川底にこれまで見られなかった川のりを見つけ、「あっ、すごい」とみんなで声を上げたほどです。自分たちの取り組みに強い自信が生まれ、力を合わせてきた地域住民のきずなが深まった瞬間です。



 学校日課の中に設定されたEMタイムの中でEMの常時継続活動を続ける子供たちは、児童会主催の全校会議の中で「お米のとぎ汁千リットル作戦」を打ち立て、実行していました。



 第4回目のクリーン作戦は、そのような子供たちのアイデアによる「EM泥団子1万個大作戦」へのチャレンジです。本校と平戸高校との線がつながり、その線が中津良川流域住民やほかの地区の住民をも巻き込み、大きな面となっての作戦実行です。



 総勢120名が六つの班に分かれて、高齢者の方々が子供たちに中津良川の思い出を語りながら、また、老若男女が互いに声をかけ合いながら取り組みました。そして、各班から次々に聞こえる「万歳」の大合唱。見事に目標をクリアすることができました。



 翌週にはみんなで1万個の泥団子を中津良川に投入するという2週間にわたっての大作戦でした。



 子供たちの願いが地域の願いとなって膨らみ、地道な活動を続けてきたこの成果が「広報ひらど」2月号に大きな喜びとなって表れました。平戸各地区の河川における汚染度調査のデータが掲載され、中津良川だけが唯一遊泳可能な川として認定されるというニュースが飛び込んできたのです。
 



 そして今年の5月、清流復活を告げる使者がこの中津良川に輝きました。蛍です。子供たちの継続的なEM活動と、中津良地区住民との連携による中津良川クリーン作戦の成果がこの初夏の夕暮れにほんわかと姿を現したのです。


 これまで中津良川にも蛍はいましたが、今年の夏は地元の人たちも見たことがない無数の蛍が真夏のクリスマスツリーとなって中津良の町を、たくさんの人の心をともしました。この輝きはまさに子供たちの夢とふるさとの未来につながる光の帯です。



 地域の中に蛍保存会も発足し、中津良の町の輝く宝石を守ろうする取り組みが進められています。

 



 EMによる町興しが力強い一歩を踏み出しました。蛍鑑賞会に集まった子供たちも時の流れを忘れてしまったかのようにその場にたたずみ、無数の蛍星に心を奪われていました。自分たちが進めてきた中津良川プロジェクトにますます自信と誇りを持ちながら、本校の中津良川プロジェクト、とりわけその活動の手段として取り組んでいる子供たちのEM活動と、地域全体での取り組みについて、私は平戸市の公民館大会で発表し、各地区の公会堂で報告する機会をたくさん得ることができました。テレビや新聞の取材により本校の取り組みをいろいろな方々に知っていただきました。



 それではここでしばらくの間、今年6月にテレビ放映された本校中津良川プロジェクトの取り組みをご覧ください。

 
 (ビデオ上映中)
 
 −− 水曜日の特集「水が危ない」です。今日はこの言葉です。「EM液」。これはエフェクティブ・マイクロオーガニズムスの略なのですけれども、日本語で言うと「有用微生物群」というのがEM。その液であるということで80種類ほどの微生物を培養した液体のことを言うのです。以前このコーナーで諫早市の婦人会の皆さんや環境団体がこれを使って水をきれいにしようという取り組みを紹介しました。
 
 −− はい。そして、平戸市では小学生たちがEM液を使って川をきれいにしようという取り組みを続けていました。
 
 −− 平戸市の中津良小学校6年のオオイシマサノリくん。朝早くから米のとぎ汁を使って何やら茶色い液体を作っています。この液体を毎日作るというオオイシくん。ペットボトルをリュックに詰め込んで登校です。中津良小学校の児童は毎朝この液体を学校に持っていくのだそうです。
 
 オオイシ 行ってきます。
 
 −− 中津良小学校では毎週水曜日は「ごみゼロすいすい水曜日」を合言葉に登校時、児童たちがごみ拾いをします。中津良地区の美しい自然を守ろうというこの取り組み。集めたごみは児童たちが分別し、決められた場所に捨てられます。
 
 オオイシ 僕たちから大人の人たちにごみを捨てないようにもっと呼びかけをして、まず僕たちからごみを捨てないようにしようと思います。
 
 −− 学校の理科室をのぞいてみました。オオイシくんたちが作っていた液体が窓際に並んでいました。実はこの液体、米のとぎ汁にEM菌というバクテリアを混ぜ込み、EM菌が繁殖しやすいように糖蜜を加えたEM液と言うもので、水の浄化に効果があると言われています。
 
 −− 流れている有機物等をその菌が分解して無機物に変えて、その栄養、餌になるものを分解しているということです。
 
 −− 中津良小学校の近くを流れる中津良川は、かつては蛍が飛び交うほどの清流でした。しかし、いつしか川から蛍は消え、水面(みなも)には洗剤の泡やごみが目立つようになりました。そこで中津良小学校はおととしから毎週水曜日の総合的学習の時間を「EMタイム」と名付け、中津良川にEM液をまき、再び蛍が飛び交う清流を取り戻そうと立ち上がったのです。児童たちの取り組みは地域の人たちの共感を呼び、去年7月には地域ぐるみの大掃除も行われました。
 
 −− もう気が付いた時には汚れとったという感じでしょう。じゃあ、今のうちにストップ。いや、前の川に戻そう。遊べる川にしよう。蛍が飛ぶ川にしようという子供たちの夢を地域の人とみんなで一緒に追い求めたらいいと思います。
 
 −− 児童たちは掃除にもEM液を利用していました。EM液を入れた水を使って水ぶきをすると汚れがよく落ちるのだそうです。そして、理科室で不思議な泥団子を見つけました。EM泥団子と言って、泥にEM菌を混ぜ込んだぬかと糖蜜を加えて丸め、1週間乾かしたものです。表面にかびが生えているのはEM菌が発酵しているからなのです。児童たちはこれも「川にまく」と言うのですが・・・。
 2日後、児童たちがEM液を手に中津良川にやってきました。浄化作戦の開始です。かつての清流が戻るよう願いを込めて、児童たちが一斉にEM液をまいていきます。そして、EM泥団子の登場です。EM液は川の流れが速いときはすぐに流されてしまいますが、EM泥団子は川底に沈み、少しずつ溶けていきます。有機物を分解するEM菌の川の中での滞留時間が長くなり、より効果的なのだそうです。2年間の活動を通して、児童たちは中津良川の変化を肌で感じているようでした。
 
 −− 何でみんなはEM活動をやるの?
 
 −− 川をきれいにするため。
 
 −− 前は川に泡がいっぱいあったけど、少なくなった。
 
 −− やっぱり魚が多くてよく手長エビが捕れました。
 
 −− そして、児童たちの取り組みを見ている地域の住民たちは、「環境に対する意識が変わってきた」と言います。
 
 −− やはり子供たちが一生懸命やれば、大人もごみを捨てられないということになってきますね。子供たちと一緒に川をきれいにしなければと思っております。
 
 −− 平戸市の調べによりますと、中津良川の水の汚れの度合いを示す目安となるBOD、生物化学的酸素要求量の値は99年には1.1でしたが、去年は0.4にまで減少しています。その日の夜、中津良川のほとりの雑木林に行ってみました。蛍です。ピークは過ぎていましたが、ライム色の光を放つ源氏蛍が時間を追うにつれ、その数を増していきました。
 
 −− 僕たちの子供が生まれたら、その子供たちにもここで遊んでもらいたいから今のうちにきれいにしておきたいのです。おばあちゃんたちとかも「昔の川がいい」と言っていたし、僕たちもそういう川で遊びたいので頑張っています。
 
 −− きれいな川で蛍が見たい。大事な自然を守りたい。そんな願いを込めた児童たちの地道な活動が川に蛍を呼び戻していました。児童たちの取り組みはこれからも続きます。
 
 (ビデオ終了)



 今年度、本市の行政機関も積極的に動き出しました。各地の公民館に大型のEM培養機を設置して、地区の住民へEMの提供とその活用についての学習会を行い、EM活動の輪を強力に推進しています。本校と平戸高校を軸とした学校間連携も広がり、平戸市南部地区の学校ネットワークが構成されました。その共通テーマは「環境美化から環境浄化へ」。まさにEM活動ネットワークです。



 そしてつい先日、本校の運動場に幼稚園児、小学生、中学生、高校生及び漁業関係者、地区住民が200名集結し、「みんなで作ろうEM泥団子作戦」を展開しました。本校の点が学校間の線となり、やがて各学校や諸団体からつながる面となって、活動の輪がますます広がることを願っています。この子供たちの取り組みは今年度1月の平戸市南部における「きらきらふるさとの集い」で発表され、そのネットワークはますます強くなることと期待されます。



 今、子供たちは手作りいかだに歓声を上げ、干潟に埋もれながら心行くまで中津良川と語り合っています。



 中津良川の水辺では来年の夏の輝きを夢見て蛍の幼虫たちが静かに呼吸をしています。中津良川はやがて広大な海へと注ぎ込みます。海は世界を結ぶ共有の財産です。子供たちにはこの中津良川プロジェクトを通して、その目を世界に広げていってほしいと思います。そして、輝く未来を見つめながら、自信を持ってたくましく生きていってほしいと願っています。
 



 5、6年生の子供たちが思いを込めてふるさと中津良川の絵を描きました。絵には次のような俳句が添えられています。「清流に秋の青空照らしてる」。



 「日が暮れて魚を追う声、はしゃぐ声」。これからもますます輝け中津良川。



 ご清聴ありがとうございました。(拍手)


瀬古
 素晴らしい発表をありがとうございました。曽川先生の発表でした。続けて、緑ケ丘中学校の村田先生から発表をしていただきます。


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