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EMフェスタ2003 専門分科会
最南端のナシ栽培
宮里 幸啓(みやざと ゆきひろ) (有)熱帯資源植物研究所

プロフィール:
昭和43年生まれ
県立南部農業高校から県立農業大学校に入学。
H2年農業協同組合入社。
H6年やんばる農業協同組合へ合併。
H12年(有)熱帯資源植物研究所 入社。
現在、農産園芸事業部 許田チーム リーダー
(兼)総合企画部 販売企画チーム リーダー

今井それでは最後に果樹に取り組んでいらっしゃいます宮里さんから「最南端のナシ栽培の成功」というタイトルで発表していただきます。皆さん沖縄でナシを見たことはないと思いますが、ナシは亜熱帯植物ではございませんので、普通、栽培は難しいわけでございます。それを台木育成の時からEMを使いまして、また他の技術を駆使しながら、美味しいナシの生産が可能になりました。これは沖縄では画期的なことでございまして、これが実現すればナシが沖縄の美味しい果物の一つに加えられるのではないかなと期待しております。それでは宮里さん、お願いいたします。
(拍手)



宮里
 ただいまご紹介に預かりました有限会社熱帯資源植物研究所の宮里と申します。タイトルに入る前に余談になるのですけれども、私、熱帯資源植物研究所4年目になるのですが、その前約10年間JAの方で農家指導、花卉栽培指導を行っていました。その時に慣行栽培、農薬をじゃぶじゃぶ掛けて虫を殺しましょうとか、土壌分析をした結果、化学肥料をどれだけやりましょうという形でずっと指導してきたのですけれども、その中でなかなかEMというものを理解できず、今のままの農業ではいけないなあという思いから、現在の会社に入社して、EMを自分の目で見て自分で触れて土作りをしながら今やっている最中です。
 これから本題に入りますが「最南端のナシ栽培成功」ということで、先程も紹介がありましたように、沖縄の方では温帯果樹がなかなか栽培できないということで、何か手法はないかなということを捉えながら栽培に取り組んできました。



 まず最初に説明概要としまして、1.問題提起、2.解決手法、3.結果、4.考察、5.EM活用メモという順番で発表させていただきます。



 まず1.問題提起としまして、先程話しました沖縄の方でもナシができないかというところで、元々当社の方では台湾の方から在来種のナシの種を導入しまして、その台木に豊水・幸水の接ぎ木をしていくのですけれども、台湾在来種・原種のナシはあるのですが、品質的に不味く・形も悪いので、本土スーパーの店頭に並べられていますのは、旨い豊水・幸水です。これらの品種の接ぎ木栽培ができないかということを問題提起としてとらえました。その技術的課題としては、本土の豊水・幸水は温帯向けに品種改良されているので、沖縄で実がつかないというところです。その理由としては、低温にならないと花芽が分化しないということで、ナシについては、花芽分化温度というのが6〜7度ないといけないのですが、沖縄の中ではよく下がっても、10〜15度なので、まだ全然温度が足りません。



 こちらは解決手法1として、沖縄にある台湾在来種のナシを台木としてEMで育てるというところですが、下の写真は農場の状況です。特にナシというと、僕も見に行ったことないのですが本土の方に行くと自分の背丈以上の棚式で栽培されているようですが、特徴的に棚を約1m位にしまして、枝は誘引していきます。約1mにした理由としては、毎年接ぎ木していきますので、その時にラクして誰でもできるという高さにしたというところです。



 解決手法2としまして、11月頃から本土からツボミの付いた、花芽分化のおこった穂木を取り寄せるということです。接ぎ木というのは色々方法があるのですが、特に花芽・ツボミの付いたものを接ぎ木するというのは、ちょっと常識外なところです。右の方に写真がありますが、昨年、千葉・栃木の方から取り寄せた花芽分化のおこった穂木です。
 一芽つけまして約4〜5cmくらいに穂木を調整しております。この時期の本土農家では整枝剪定をするために、穂木になる枝を手に入れやすいということで、捨てるというのは少し本土農家に対して失礼なのですが、必要のない枝を沖縄に送ってもらうということをしております。



 解決手法3としまして、台木に豊水・幸水の花芽分化のおこった穂木を接ぎ木しますということで、先程の穂木を今ちょうど台木の方に接ぎ木しているところです。切り接ぎになるのですが、右の方の写真のように形成層を合わせ、テープを巻くだけで、誰でも簡単に接ぎ木が出来ます。テープを巻いてから約10日位で穂木と台木が活着します。30日程で花が咲くので、接ぎ木したあとには当然水分とか直接入らないようにビニールをかぶせておきます。



 解決手法4としまして、人工授粉によって着果させるということです。特にナシにつきましては、直に受粉させると奇形果がでる可能性が随分と高いので、花粉は購入するか、前季のものを取り置くか、あるいは豊水と幸水で互いに受粉させる必要があります。一昨年からナシの栽培を始めているのですが、一昨年は豊水・幸水を筆で交配しました。そうするとかなり時間が掛かるので、ナシの穂木は水に漬けておくだけで花粉が取れるのを利用して、昨年は幸水の穂木を水に漬けておいて幸水の花粉を採取し、豊水に交配していくという方法でやりました。



 解決手法5としまして、穂木が10日くらいで活着したものに交配して、2〜3週間すると実がなりだすということです。花芽は起こらないのですが、沖縄の真冬の1月・2月・3月は、ナシにとって花を咲かせて実を結んでいく一番良い温度になっており、冬から春にかけて果実の肥大期になるということです。今年も11月3日くらいから接ぎ木しているのですけれども、5月頃から収穫が始まります。



 解決手法6としまして、5月から6月までにナシの果実が収穫できるということです。それは特に沖縄では、毎年到来します台風シーズンに合わないということで、5月に収穫が終われることが一番メリットであります。
 下の写真は今年収穫されたナシの販売をしている直売所です。ちなみにこの大きさで1個400〜500円で販売をしました。



 結果としまして、穂木1本に2〜3個のナシを実らせるということ。一つの穂木に6〜7個の花が咲くのですが、その中で摘果をしながら、一つの穂木に2〜3個のナシを付けて残していきます。大きさについては平均300gです。本土から出てくるナシも300〜400g位なので、沖縄の場合でも充分なナシが収穫できます。糖度を測ってみますと14度でした。本土の方でも糖度は13、14度位だと思います。評判としては良かったです。10aあたりの収穫量なのですが、今年の実績で400kg弱でした。今年、接ぎ木しているのは、台木がかなり充実してきていますので、一つの木に約40本の穂木を接ぎ木する予定で、4tの収穫目標を掲げております。



 結果2としまして、平成15年7月に沖縄タイムスの新聞記事に掲載されております。



 考察としまして、期待される効果は、先程もお話しましたように、1.台風シーズンに入る前に収穫が終わっているので、台風被害に遭わない。2.千葉・栃木辺りから幸水が出てくるのが8月上旬と聞いていますので、3〜4ヶ月は早めに収穫でき、本土の農家と競合しないということ。3.同様の手法で、気候の類似する台湾の方でも豊水・幸水はでき、競合が懸念されますが、台湾産のナシは法的規制により日本に輸入できないということになっています。



  EM活用メモとしまして、EMボカシは毎月一度・1株に9kgの割合で施肥を行っております。特に沖縄は、暖かくて紫外線が強いものですから、有機質の分解が早いため、EMボカシ・微生物もどんどん突っ込んでいこうと思います。
 次にEMボカシの良い点として、慣行農法では、株や葉の成長期にはN・チッソ、花・実を肥大させるのにP・Kリン・カリが多用されるのですが、ボカシではこのことを特に考慮することなくできます。先程言いましたように農協で、以前このNPK指導してきたのですが、ボカシを使用していると、このようなことも考えることもなくラクして土作り・栽培できるということです。



 EM活用メモ2としまして、敷き藁を2〜3ヶ月に一度、EMのエサにもなりますし、乾燥を防ぐということで、特に私の捉え方なのですが、EM=有機物が必要と思っておりますので、敷き藁についてもEMのエサですよと言う感じで、敷き藁を敷いております。
 土の理想的な団粒構造としまして、固相で50%、液相で25%、気相で25%なので、理想的な状態かどうかは有機質含量によるとの捉え方をしまして、有機物=EMといった感覚で栽培を行っております。



 EM活用メモ3としまして、EM活性液を潅水時に常に散布しています。これは有機物の分解等が早いものですから、EMをどんどん入れながら、ただの水はやらないということで、毎日でもEM活性液を投入しております。
 続いて、土の水分量をみて適宜に潅水するということです。果実の肥大期には水を多めに掛けるという水の潅水方法をしております。



 EM活用メモ4としまして、敷き藁も同様なのですが、堆肥3ヶ月に一度投入していく。これについてもEMのエサという捉え方で堆肥を投入しております。EM3号、光合成細菌なのですけれども週に1度潅水時に散布しております。



 今後の課題・展望といたしましては、特に豊水・幸水を栽培してきたのですけれども、これから育種を含めながら沖縄で開花するようなナシにトライしていきたいなと考えております。以上です。ご静聴ありがとうございました。 (拍手)


今井
 ありがとうございました。4名の方にご報告をいただきました。今のナシの栽培でございますが、本土より2ヶ月位早いということで、5月・6月頃にナシが食べられましたら、珍しいものが好きな日本人にとっては興味のある方もあるのではないかと思います。それも無農薬でできましたら最高ではないかと思います。
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