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汚水処理分科会
EMフェスタ2001
専門分科会
『EMによる環境負荷の提言』


コーディネーター
片寄  滋 (株)イーエム研究機構 東京事務所

パネリスト

日比野研一 (株)イーエム研究機構 盛岡事務所
水野照久 (株)イーエム研究機構 東京事務所
奥田文 (株)イーエム研究機構 東京事務所
2001.11.17

司会:
 それでは時間となりましたので「EMによる環境負荷の提言」というテーマを持ちまして、分科会を始めて参りたいと思います。
 ここの会場にもおられると思いますが、自然にちなんだお名前を多くの方がお持ちではないでしょうか。例えば鈴木さんですとか、西川さんですとか、西沢さんですとか、あとは星さんですとか。
 たまたまこちらにパネラーでお願いしていますEM研究機構の各研究員の方たちも偶然ですが、 奥田さん、水野さん、 日比野さん、それぞれ自然にちなんだお名前でございます。私だけちょっと違うんですけれども。
 そういう意味で私たちの生活というのは、自然と密接な繋がりを持ってきた。自然に敬意を払いながら生活をしてきたということが言えるのではないかなと思うんですね。
 ただ残念ながら私たちの文化的な生活というのは、自然への負荷を高めた上に成り立ってきた。言い換えれば、自然の許容能力を無視した一方通行的な文化的生活であった、というふうに言っても過言ではないと思います。そういう中にあって、私たちは汚水処理に携わる者としてどういうことをなすべきか。またEMがその中でどのような役割を担っていけるのか、ということまでも含めて技術的に皆さんの理解を深めて頂けるような分科会にしていけたらと思います。
 時間の制約上、発表事例は三題となっていますが、三題トータルしてEM技術がそれぞれに散りばめられた内容となっています。最後の方でまとめて質疑応答の時間を設けますので、その際に忌憚のないご質問ご意見等をして頂ければと思います。
 それでは最初に"臭気抑制"を課題として発表をよろしくお願い致します。

奥田:
 はい、皆さんこんにちは。EM研究機構の奥田といいます。
 今日はこれまでEMによって臭気の抑制が可能と言われてきまして、実際にそういうのを体験された方もかなりいらっしゃると思うんですね。私たちも普及に携わる者あるいは研究に携わる者として、臭気を抑制するのは可能だけれども、果たしてそれが何故起こるのかまたどういう仕組みで起こるのか、ということでやはりユーザーさんの方に求められることが多いわけです。
 今までこういうふうにEMが働いて、こういう理由でこうなるんだろうという予測は立っていたんですけれどもこの度実験をしてきました中で一つの証明する材料が出来ましたので、そのことについて発表をさせて頂きたいと思います。
 ではOHPの方からお願いします。今私の勤めていますEM研究機構の東京事務所では関東以北を対象に、普及および研究活動をさせて頂いているんですけれども、今日は新潟県の能生町という町がありまして、ここは日本海側で蟹の産地として有名なんですが、ここの下水処理場の事例を中心に発表を進めて参りたいと思います。


 能生浄化センターは海沿いに近く能生川という川に放流していまして日計画処理水量6,500 トンですが、実際に流入しているのは半分ぐらいの2,800 トンになっております。この処理場が出来た当時は民家が少なかったんですが、現在は隣接民家も多くなって来たんですね。そうするとやはり夏場には建物で囲っていても臭いが出てしまう。
 それでこちらの担当者の方が出来るだけ安全なものを使って、かつコストが安いものをと検討したところ、EMの情報を得られまして、この5月から始めました。


 ここの下水処理場は回転生物膜方式と言って円盤に生物膜と言われるものをくっつけて、それがぐるぐる回る間に水がきれいになるという仕組みになっています。その水は次に沈澱槽に流れて個液分離され、きれいな水だけ流れる。沈んだ汚泥は汚泥濃縮されて汚泥貯留槽から水を絞ったあと場外に搬出されています。
 EMの投入は、あとでも詳しくやりますが、マンホールの中とか、ポンプ場の中とか、役場からとか流入水にも濃縮槽にも貯留槽にも入れて、とにかく徹底してEMを使って下さっているというところが一つは早く効果が出たということになります。
 施設の回転円盤は人の高さよりも大きい槽の中にプラスチックの丸い板が何枚も何枚も重なっていまして、それを汚水の中でぐるぐる回すことによって、汚水を浄化する菌が自然に出てくるんですね。かつEMをここに撒くことで浄化力が上がるという効果もありまして、時々EMをここに撒いています。
 EMは施設の中で一次培養をして、それから二次培養をこの1トンタンクで行って、これは全部役場の職員の方がやって下さっているんですけれども、コストの非常にかからない方法でバケツを用意したりタンクを用意したりして、大体作業的には半日くらいですかね。半日作る作業で、半日あちこちポンプ場に持っていく作業を全部役場の方がやって下さっています。  
 投入は、農業用の1トンタンクなんですけれども場内のマンホールを開けてそこから滴下するとか、あとはトラックでポンプ場の方に運んでいって、そこに設置してある同じようなタンクから点滴をするというかたちで行っています。
 この処理場は回転生物膜方式で約2,800 トン、目的は臭気対策だったわけです。まあついでに汚泥が減ったりとか、いろんな余得の効果が出てくればいいというぐらいの考えでやってまして平成13年の5月から始めて来年も継続していく予定です。


 投入場所はポンプ場。屋根が付いている大きいポンプ場が一ヶ所ありまして、そこから投入しているのとあとマンホールポンプと言って、町内あちこちマンホールを開けるとポンプがついているところがあるんです。ただ小さい集落ですと4軒しかそのマンホールに繋がっていないところなんかは、汚水の汲み上げが1日に1回位しかないわけですね。だから汚水が腐る前にEMを効かせるというのがポイントの一つになりますので、なるべくそういうところから汚水が腐る前、あるいは悪い菌が出てくる前からEMを効かせていくということで、かなり場外の投入は強化してもらっていると思います。
 あとは先程申し上げました処理場内の汚泥濃縮槽、汚泥貯留槽、それから回転円盤の方にも浄化力を上げるために撒いています。  EM活性液の作製方法ですが、EMミラクルという百倍利器に似た200 リットルの製造装置があるんですけれどもこれにEM1号を3%、EM2号が1%、EM3号が1%、糖蜜は2%でやっています。これを大体35度から40度くらいに上げて4日間くらいでpHは3.5 になるんですけれども、これを一応7日間置いていい時にはpHは3.1 くらいまで下がります。これを次にもう1回活性させるわけですけれども、これはコストを下げるためにやっています。その時には一次培養液を約20倍から25倍にしまして糖蜜は1%。これもお湯で仕込んで7日間培養してpHが3.5 から3.1 まで下がったところで使うということにしています。
 何故糖蜜が1%かというと、汚水処理の場合には糖蜜が多いとそれが過栄養というか、栄養が多すぎてしまって逆に害になることもありますので、だから糖蜜は少なくしているんですけれどもこれを米のとぎ汁発酵液とかで代替する場合にはそのまま濃いものでも良いと思います。
 それから先程も申し上げましたけれども、仕込みの作業は半日、投入作業は半日、これは全部役場の職員の方がやっています。
 次に結果の方ですけれども、今回は臭気のデータは持ってきませんでした。と言いますのは臭気はほとんど抑えられていて、本当は本日ここに役場の担当者に来て頂く予定だったんですけれども、処々の都合がつかなくて来て頂けなかったんです。ただ臭気に関しては、本当に抑えられたという効果を確認して頂いています。
 これまで硫化水素を作るのが硫酸還元菌だと言われていたんですけれども、EMの投入によって硫酸還元菌がどのように抑えられるかという数字を取ってみたところ、効いているという関係データが取れたのでそれを説明したいと思います。  


 流入水における硫酸還元菌数のグラフですが4月23日、この最初の二つのところはEMを入れる前です。普通ですと4月、5月はまだ気温が低くて平均気温で15度くらい。新潟はそれくらいなんですが6月になると気温は急激に上がりますから、この直線のラインからいくと硫酸還元菌の増殖数も上がっていくはずなんですね。しかし、EMを投入したのが5月の連休明け位でしたけれども次にサンプリングをしたときに、もうすでに少し下がっているんです。さらに6月になると、もう7,000 台まで下がっているんですね。普通だったらもっともっと何倍にも増えるものが、これは2ケタ増とか3ケタ増とか。それが逆に100 分の1とか、1,000 分の1にまで減っているわけです。7月とか8月になりますと、これはかなり急激に気温が上がっていますので、多少増加はしていますけれども、それでもEMを入れる前の時点よりは低い値です。
 ここで9月になって何故ここでぽーんと上がったかと言うと、近くにもう1つ処理場がありまして、そこの汚泥をこの能生浄化センターに搬入して再処理しているのですが、そこの方にもEMを入れて始めてすぐ後なんですね。硫酸還元菌とかメタン菌というのはEMが生成する有機酸をエサにして増殖することもあります。ですからEMの菌数よりも硫酸還元菌とかメタン菌とかそういう悪い菌が多いとどうしても負けてしまって、一部エサになってしまうんですね。そうするとよくこのようにぽーんと上がる現象があるんですけれども。
 例えばEMを入れて臭いがすごく出たという場合には、要するにEMの菌のレベルがまだ勝っていない。但し、ずっと投入を続けていくとこのように下がってきますから、その辺は心配しないで安心して続けて頂きたいな、と思うところです。特にこちらの最初沈殿地越流水における硫酸還元菌数のグラフではその傾向がはっきりしているんですけれども、上がってきてあまり下がらなくて下がってという、こういう繰り返しをしていますけれどもトータルで見ますとやっぱり右方下がりになっていますね。
 それから汚泥貯留槽ですが、こちらなんかは汚泥をそのまま溜めていますから、もともと腐っている状態なんですけれども、腐った状態にEMを入れるとこうやってぽーんと上がるわけです。入れつづけていると下がる。暑くなるとまた上がって効いてくると下がる、というのを繰り返しながら段々段々下がってくるわけですね。これは他の処理場からの影響も出ていますので。例えばもう一つの処理場から汚泥を持ってくるときにEMを入れておくとか、そういうどこでもEMを優先させる環境を作れば必ず下がるものです。
 それからこの近くに福井県の宮崎村というところがあるんですが、こちらの汚泥を調べるとやはり汚泥貯留槽でも同じ時にサンプリングしますと大体100 分の1くらい、ここの処理場に比べて低いわけですね。そこの脱水ケーキはもう全く臭いがしないので、やはり徹底してEMを長く使っていくことが重要なのではないかと思います。
 もう一つ私どもでやっています下水処理場の紹介なんですけれども、これはもう3年前から発表をしているのであまり詳しいことは言いませんが茨城県の守谷浄化センターというところで先ほどの能生浄化センターの約10倍、1日に3万トンの汚水が流れてくるところです。


 システムは標準活性汚泥法と言いまして、ビール工場を含めその町全体の汚水を集めて活性汚泥といういわゆる汚泥をボコボコボコボコ空気にさらし、汚泥に汚染をくっつけて、そのくっつけた汚泥を場外に搬出することで水はきれいになるという仕組みです。


 これは重力濃縮槽と言って、余分な汚泥を持ってきて汚泥を沈めるところなんですけれども、この上澄みがまた流入水に返って汚泥は汚泥処理の方に行くわけですね。ここにEMを集中して入れていたわけですがこの意味はここに入れると上澄み越流水を通してEMは処理場内に回るし、汚泥の方にもここに入れておけば回るしということで、循環させるEMの培養槽として使いかつ効果を高めるのに非常にいいところということで選択しました。


 この重力濃縮槽の廻りに越流堰というのがあってここを上澄み水が通るわけですけれども、EMを入れていたら何とこんなに赤くなってきちゃったんです。これはEM活性液の光合成細菌が出てきているんですね。汚水の中にはそもそも光合成細菌というのが棲んでいて、皆さんもEMの中で光合成細菌が重要だということは聞かれたことがあると思うんですけれども、この光合成細菌が実はもう一つ硫化水素を抑制するメカニズムのキーになっています。乳酸菌や酵母菌というEMの主要な構成要素である菌を入れていくと、互いに連動しながら光合成細菌のエサにもなって、この中で密度が上がってくるわけです。


 これは硫化水素のグラフデータですが、黄色い方は汚泥が浮いている時、それからピンクの方は汚泥がさっきのように沈んできれいになっている状態なんですけれども、このDとかEの時期は5月なんですが、もう硫化水素がほとんど出ないときもあって条件によっては100 %抑えられています。(グラフ2) EMを入れないと3,500 ppm という恐ろしい状況になるわけですね。今この処理場はEMの投入を続けていますが、残念ながら重力濃縮槽には蓋をかけてしまって日が当たらないので先ほどの越流堰のように光合成細菌が露出してこないんですね。だからなるべく蓋をして臭いを出さないというよりも、そういう施設にはお金をかけないで、EMを入れることで生物の機能を高めて処理をするという方法が望ましいのではないかと思っています。
 活性液に関しては、またあとで質問があれば答えたいと思いますけれども、基本的には1号の活性液だけでも光合成細菌は十分に出てきますので、とにかく水処理をあるいは臭いを消すのに成功させるポイントとしては、要所要所、その必要な所にきちんとした量を継続的に入れていく、ということが一番大事になるかと思います。
 これで私の発表は終わらせて頂きます。またあとでご質問ありましたら受けさせて頂きますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

司会:
 硫酸還元菌と硫化水素の関係はある程度は知られていたんですけれども、今回のようにグラフ比較ができたというのは非常に貴重な事例であったと思います。投入して6ヶ月ぐらいということで、この後の追跡調査を是非続けて頂きたいと思います。
 それでは次に"運転管理技術の変更手法"を課題として事例発表の方よろしくお願いします。

水野:
 それでは「合併浄化槽におけるEM浄化法の適用事例」を発表いたします。
 はじめにEM処理にいたる背景についてです。霞ヶ浦水系が放流先となります本地域では、富栄養化防止の観点から公共用水域に対する放流水質について、水質汚濁防止法に加えて茨城県の上乗せ条例により、SS15ppm、BOD10ppmの他、窒素及びリンに対しても全窒素15ppm、全リン2ppmと厳しい規制値が定められています。
 本浄化槽にはこれらの放流基準値をクリアするために、接触酸化方式の生物処理に加えて化学的な高度処理である凝集三次処理が設置されています。しかし凝集処理には無機凝集剤や高分子凝集剤を使用するためその効果の反面、汚泥発生量を増大させ汚泥の搬出費用を押し上げてしまう欠点を持っています。
 そこで本浄化槽では搬出汚泥の削減を目的として、EM浄化法が導入されました。
 実施期間は平成12年6月から平成13年5月の1年間で、以後継続中。実施場所は茨城県石岡市にあります重度身体障害者更生援護施設光風荘です。実施浄化槽の設計条件は処理対象人員140 人、日平均汚水量46.2トンですが、実流入量が約30トンであるため処理能力に余裕がある状況です。        
 EMの使用容量については、米のとぎ汁発酵液を1日10L、食堂の厨房の排水口へ点滴するかたちとなっています。発酵液の作製方法については約40℃前後のお湯800CCとEM−1号100CC及び糖蜜100CCを密閉容器で一週間醗酵させた後、米のとぎ汁10Lにこの活性液200CCと砂糖大さじ10杯をバケツに入れて、5〜7日密閉二次醗酵させたものです。
 EM処理手法の概要についてですが、汚泥の大半は凝集三次処理から発生することに起因することから、凝集三次処理を使用せずに放流基準値をクリア出来る環境を構築すれば、発生汚泥は劇的に削減出来ることになります。そこでその手法として、現状の接触酸化方式+凝集三次処理を嫌気好気循環方式(長時間接触間欠バッキ)へ変更し、三次処理を不使用と出来るように計画致しました。


 これが運転管理変更前のフローシートです。汚水は接触バッキ槽で酸化されたあと、沈澱槽で個液分離されます。そして凝集剤が添加され、フロックが形成したあと、凝集沈殿槽で再度個液分離されます。流出水は消毒後、放流されます。沈澱槽の沈澱汚泥と接触バッキ槽の剥離汚泥は、汚泥貯留槽で濃縮貯留されます。脱離液は流入調整槽に戻り、濃縮汚泥は場外搬出されます。


 これが運転管理変更後のフローシートです。フローの変更内容は主に4点です。
 1番目は左下の汚泥濃縮貯留槽から流入調整槽への脱離液のラインを汚泥返送ラインへと使用変更し、返送循環ラインと致します。
 2番目は返送循環ラインにより、接触バッキ槽を長時間バッキ槽へと使用変更し、接触ろ材と遊離活性汚泥の併用で、短時間での有機物の好気分解と窒素の硝化を促進させます。
 3番目はEMの密度を高める返送循環ラインが確保されることでバッキ方法を連続バッキから間欠バッキへ変更し、嫌気好気による生物脱窒と生物脱リンを促進させます。
 4番目は微生物の多様化による安定した嫌気好気環境を形成させることにより、それぞれの浄化効率を高めることで凝集三次処理を不使用とします。また運用面の変更内容としては風呂の排水について、浄化槽への流入水量をなるべく均等にするために施設の方が、排水方法を工夫して行われていることがあげられます。


 以下6項目について結果と個別考察を述べます。


 PH値の推移です。浄化槽の供用開始よりEM投入前までの値の多くは6.6 から6.8 で推移し、まれに5.2 や6.0 の値が見られます。これは好気分解が順調で硝酸態窒素まで窒素の硝化が進行していることを現しています。 しかし亜硝酸態窒素や硝酸態窒素は酸性質であることから、硝化が進み過ぎますとBODは良好ながらもPH値が下がり始めて4以下となって、水槽内壁コンクリートの剥離を引き起こす事例も報告されています。EM処理後、間欠バッキによる嫌気好気環境が整いました約3ヶ月以降、グラフで言うと9月前後からのPH値の多くは7.1 から7.4 で推移しています。これは間欠バッキの嫌気時間帯において、硝酸態窒素が脱窒反応により窒素ガス(N2)と水(H2O)と水酸イオン(OH)に分解された結果、放出されたアルカリの水酸イオンによりPH値を上昇・維持させているためと考えられます。


 透視度・SS・BODについては、凝集三次処理による効果が顕著に現れる項目ですが、凝集三次処理を不使用としたEM処理後も、多少の数値の上下はあるものの各値とも三次処理を実施したときと同様の放流基準値以下で推移しています。ちなみに旧建設省の浄化槽構造基準では、三次処理を持たない合併浄化槽の放流基準は通常BOD20ppm、SS25ppm、除去率90%で設定されていますが、本浄化槽においては三次処理を不使用としたにもかかわらずBOD10ppm以下、SS15ppm以下、除去率95%以上と浄化効率が高く、ワンランク上の処理水が得られています。
 なお本浄化槽ではバッキ槽のバッキと沈澱槽の汚泥返送用エアリフトが、バッキブロアの吐出空気を共用していることから、間欠バッキの嫌気時間帯で沈澱槽堆積汚泥の浮上が生じることがあります。そのため好気時間帯における汚泥返送量を最良にするといった調節が必要になります。グラフの数値の上下は汚泥返送量の微調整から発生したものであり、浄化機能の良し悪しに起因するものではありません。

 EM処理前において放流基準値を幾度となくオーバーしていた放流水の全窒素は、運転管理の変更後約3ヶ月を経て、間欠バッキの嫌気好気環境により脱窒が促進された結果、大幅にその値が低下し、さらに継続しています。これは脱窒菌には酸素のあるところでは酸素呼吸をしますが、ないと発酵によってエネルギーを獲得する性質があるということ。また脱窒速度を高めるには、水素供与体としての有機炭素源、糖類などの存在が効果的なこともあることから、EMの作りだす環境がその安定増殖に寄与しているものと推察されます。  


 放流水の全リンについて凝集三次処理時には、その凝集効果により放流基準値以内で推移していましたが、凝集三次処理を使用停止し、嫌気好気環境による生物脱リンへ変更後も基準値を継続してクリアしています。
 なお一般的に生物脱リンについては、雨水混入などにより汚水中の有機酸濃度が薄くなると、嫌気槽でのリン放出、好気槽でのリン摂取が少なくなる現象が報告されています。本浄化槽においても計画流入汚水量に対して、風呂排水などの流入比率が高いことから有機酸濃度の薄さが懸念されましたが、グラフの通り、放流基準値内を推移しています。これはEMによる有機酸の産生がリン酸蓄積菌の生育環境を作りだし、安定したリン摂取を継続させたものと思われます。


 共用開始後より3ヶ月に2回程度であった汚泥の引き抜き頻度につきましては、その後の接触ろ材における生物膜の剥離汚泥分の増加を考慮しますと、月1回の搬出ペースに近づくものと思われました。しかし運転管理変更直後の6月の引き抜き以降、9月に1度引き抜きされた以外、汚泥搬出は実施されていません。


 削減経費については、比較するための前年度が供用開始年度であり、また9ヶ月しか経過していないことから単純に年度比較が出来ません。そこで設計書予算と運転管理変更直前の浄化槽の槽内状況を考慮して検討したところ、汚泥搬出費、凝集薬品費及び電気代合計で年間97万円の削減という結果が推計されました。


 次に結果について全体的な考察を行います。まず搬出汚泥については運転管理変更後年1回のみで、推定搬出費は9割減となりました。また処理水質についてみると間欠バッキによる嫌気好気環境及び循環環境が整った2、3ヶ月以降からは三次処理を実施していないにも係わらず処理水質は三次処理を実施したときと同様の処理水を継続放流しました。
 今回の表面上の主目的は搬出汚泥の削減でしたが、それを達成するには凝集三次処理を使用せずに清澄な処理水を得ながら脱窒、脱潟唐行うことが必要でした。言い換えれば生物脱窒、生物脱リンが運転方法変更の真の目的だったとも言えます。水質汚濁防止法にとって、河川の富栄養化防止のためには窒素除去、リン除去の規制強化が欠くことの出来ない項目です。今後は大型浄化槽だけではなく、小型浄化槽まで規制強化対象になるものと推測されます。この状況を踏まえますとEMの作りだす微生物の多様性を促す環境は、汚水浄化にあたって経済的かつ安定した生物利用手法の一つとして重要な手掛かりになるもと思われます。


 今後のステップアップについてですが、急激な運転管理変更に伴う処理水の悪化を避けるために、徐々に馴化しながらの調整としました。間欠バッキ4時間を1日3回としまして、当初目的をクリア出来る状態になっております。ただMLSS、つまり槽内汚泥量の推移を見てみますと、やや右肩上がりに増加傾向であるため、さらに嫌気時間帯の延長や汚泥貯留槽の使用方法改善等、横ばいグラフになるように調整余地があるように思われます。
 また脱窒、脱リンに必要な槽内汚泥量の調整や嫌気時間帯の延長に伴うリン溶出の防止など、現有設備だけでは調整限度が生じる場合、簡易的な追加設備にて対処出来るように検討する予定です。ただ注目できることは、一般的に嫌気状態で活性汚泥中よりリン溶出が生じるとされていますが、EMの密度が高まっている場合、産生する抗酸化物質や金属ミネラルと結びついて、結合性の強いリン化合物(金属性リン等)などになって溶出しにくい状態になっているとも考えられます。
 また時折見られます浮上スカムが浄化槽汚泥特有の臭気もなく、破砕しても濁りにくく、かつ水分離性も良好なことを考慮すれば、槽内汚泥を自家処理として土壌還元させ有効利用することも検討出来ます。
 現段階では第2ステップとしまして、今年の5月以降から汚泥貯留槽の条件を変えておりまして、以前はゆるく攪拌バッキをしていたんですが、それを停止しました。現在では、上に脱水ケーキのようなかなり弾力性のある汚泥を形成しております。ただ臭気についてみますと臭気がしないとは言えませんが、ただ腐敗臭のような臭いはしません。現状はちょっと見た目が悪いんですが今後のステップアップの研究課題になります。
 本浄化槽ではEM浄化法としての本領発揮にはまだまだ余力があるように思われますので、その能力を最大限に引き出して、安価で持続可能なシステムを追究していく予定です。以上で発表を終わります。

司会:
 はい、どうもありがとうございました。
 今までは運転管理を変更しにくい状況にあったと言いますか、変更することの技術的な理解を得ることが出来ない為、従来の運転方法を変更しないでEM投入の効果をどうやって出そうか、効果を出すんだ、というようなやり方をして来たんですね。でも今回の光風荘事例というのは、EM側の立場に立って運転管理を思い切って変更すればここまで出来る、というようなEM効果の凝縮した事例だったと思います。  また皆さん後ほど質疑応答の中で、成功したポイント、また技術的に突っ込んだポイント等お知りになりたい方は、ご質問等して頂けたらと思います。
 次はこの光風荘事例のようにEMの密度を高めた生成汚泥や放流水の性状はどのようになっているのだろうか、ということを受けまして"発生汚泥の有効活用とその可能性"を課題としてお願い致します。

日比野:
 皆さん、こんにちは。EM研究機構盛岡事務所の日比野と申します。
 今日発表する内容は修士論文で取り扱った内容なんですが、沖縄県の北部にあります本部下水処理場、ここはEM浄化法を取り入れて5年ぐらいになるんですけれども、水処理で水質が良くなるだけではなくて、そこから出る汚泥も良くなるというのを発表するのが一つと。
 あとこれも皆さんご存じかと思うんですが、沖縄県具志川市にある具志川市立図書館。こちらは9年前浄化槽を造った時からEMに取り組みまして、今まで一度も汚泥の引き抜きをしていない浄化槽であります。こちらの浄化槽の水の性質について述べたいと思います。
 それではまず本部処理場についての説明からさせて頂きます。本部下水処理場は1996年からEM浄化法に取り組んでいます。


 これは本部処理場沈砂池における臭気変化の比較表になります。
 昭和63年の硫化水素とアンモニアが、平成11年EMを使ったことによって減少をしています。まず水処理を行うにあたって、一番始めに効果が現れるのが臭気で、これは先程の説明にありましたけれども、まず悪臭の除去が挙げられます。


 これが本部下水処理場の汚泥、脱水ケーキというんですけれども、その脱水ケーキに小松菜の種を蒔いた写真です。他の処理場汚泥と比べて判る通り、EM浄化法を取り入れている本部処理場の汚泥は、処理場から搬出された直前の段階で種を蒔いても発芽することが見えました。ということは極論で言えば、乾燥させるだけで堆肥化につながるわけなんですけれども、そこまでいかなくても堆肥化するにあたって非常に有効であるというのが、視覚的にお判りになると思います。


 これは先程の下水汚泥、脱水ケーキをお湯で抽出した時の写真です。(写真5)
 下がその本部処理場の脱水ケーキの抽出液で、上と比べて見ると非常に透き通っている様子が判ります。これは何を表しているかと言いますと、濁っている状況はタンパク質がまだ残っている状態。


でも透明なのはタンパク質が分解されている、というのを現しているんです。ここでは申し上げませんけれども、実際にタンパク質を計ったり、微生物数からもデータ的にEMが下水汚泥を分解して、それでいて自分の菌体に取り込んでいるということが判っております。このようにEM浄化法を下水処理場や浄化槽に取り入れることで、水質の浄化はもとより、そこから排出される汚泥自体も性質が変わり、再利用や再資源化において非常に有効であるということが言えると思います。
 次に具志川図書館についてご説明したいと思います。こちらは9年前浄化槽を造った当時からEMを取り入れています。


 こちらのグラフはちょっと見にくいんですけれども、具志川図書館のバッキ槽のDO(溶存酸素)、ORP(酸化還元電位)、PH、ECを示しています。この具志川図書館の運転方法最大の特徴が間欠バッキ方式にあります。この間欠バッキなんですけれども、この調査した時点では1日1時間で6時間に15分ずつ・・・現在は1日合計2時間の間欠運転を行っています。
 このグラフ調査をした時は2回にわたってバッキをした時のデータを取ったものですが、DOはバッキをすれば1.7ppm 位まで上がるんですけれども、バッキを止めると再び嫌気状態に戻ります。これは2度目のバッキでも同じことが言えます。このように嫌気と好気を繰り返して運転しているのが、EM浄化法を取り入れている具志川図書館の特徴になります。
 ORPについては、嫌気状態が非常に強いとメタンや硫化水素の発生に繋がるんですけれども、この各値はそこまで還元状態が進んでいないですよ、という値を示しています。
 つまりこの運転方法は具志川図書館の場合、まあ経験的にきて、ここに落ちついた経緯があるんですけれども、バッキを収める時間をあまり還元状態にならないように、なり過ぎない程度にバッキしていることが、二つの調査から判りました。


それでPHの変化とバッキとの関係についてですが、こちらがPHとDOを二つにしたグラフです。バッキを行うことによって一時的にPHが上昇しますが、汚水として流れ込んできたタンパク質がアンモニアを経て硝酸までいき、硝化が進むことで低下し、そして間欠嫌気状態になることで脱窒が起こり、硝酸態がなくなって又上昇する、ということが考えられましたので、次に硝酸の濃度についても測定しました。


 この青いのが硝酸の濃度になりますが、これは簡易法で測定して比較できるようにしたものです。初期の値を100 とした時の値が硝酸の値になるんですけれども、バッキにより汚れとして入ってきたタンパク質が空気に触れて硝酸にまで分解され、その後脱窒現象によって、減少したのではないかということを現すグラフになっています。硝酸値の上昇とPHの低下、硝酸値の低下とPHの上昇が見てとれると思います。脱窒の起こる条件が先程水野さんからの説明がありましたように、まず微生物の呼吸のための有機物があること、それから嫌気状態であること、そして窒素が硝酸態のかたちであることの三つがあるんですけれどもこの具志川図書館を調査した結果、それらが絶妙なバランスで取られているということが判りました。
 EMを使うことによって水が良くなることは判っているんですが、実際現場を調査することでこのように科学的なメカニズムが働いて浄化していることが理解できます。もちろんこの運転法自体は、いろいろ試行錯誤の結果ここに落ちついたわけなんですけれども、それを調査すると理に適っているということが判りました。
 この脱窒現象を利用した浄化法は、EMを使わなくても行われているんです。ただEMを使うことでもっと効果があるというか、他よりプラスのかたちがあるというか、そういった特徴があってEMを流すことにより下流を浄化するという事例は多数挙げられているんですけれどもそれは抗酸化力を持った水であるということなんです。
 具志川図書館にしても浄化槽の中の鎖がさびないですとか注水に使っているホースの近くのシャッターがさびないとか、そういうのを視察に行かれると判ると思うんですが、これを実際に数値として現したのが次のスライドになります。


 これは抗酸化力の比較としてアスコルビン酸、つまりビタミンCを使ったものです。EM処理水というのは具志川図書館浄化槽で処理した水を使って植物を育てたときのビタミンCの値を示しています。
 結果から申し上げますとEMを使うことでビタミンの上昇、特に還元型のアスコルビン酸の値が上昇、他の処理区と比べて高いのが判ります。ということは抗酸化力の高い植物であると言えるんですけれども一般に言われる水質の浄化等、そういったものの他に放流水自体に抗酸化力があるということが、この実験から言えると思います。
 EMを用いることで汚泥は再利用しやすいかたちになり、水質浄化は先程の発表のように改善され、そして抗酸化力という従来手法ではなし得ない効果もEM浄化法にはあるというのが今回お伝えしたかった内容です。
 以上で発表を終わります。

司会:
 はい、どうもありがとうございました。  
 EMの密度が高まった汚泥は、非常に有効な堆肥となり、またその放流水は抗酸化物を含んだ自然を蘇生させる水だということの発表でございました。  それではこれ以後質疑応答に移ります。この三事例を含めた中で、是非これは質問したいという方はおいでですか。
 分科会は皆さんの疑問にお答えするというか、理解を深めるという意味もありますので、遠慮しないで質問をして頂ければと思います。

質問者1:
中田と申します。BODの放流水質が10ppmになっていますけれども、これはそれ以下にはなかなかならないということですか?

水野:
 光風荘データのBODの規制値10ppmに対して、それ以下にならないかというご質問ですか。

質問者1:
 
普通、公共用水域で決まっている河川水への放流基準があると思うんですが、それよりは放流水の水質としては10ppmというのは普通ちょっと高めになっているのではないかと思ったものですから。
 放流水の水質基準と公共用水域の基準は違いますけれども、それと合わせたぐらいに低くなってあればもっといいんじゃないかなと思ったものですから。

水野:
 基準値の方につきましては通常の下水道の設計もそうなんですが、安全を見た数字にせざるを得ません。どうしても変動がありますので。そうすると、例えばこの光風荘のグラフでもそうなんですが低いときでは2とか、平均すると大体4から5ぐらいになるかと思うんですけれども、それでもどうしてもピークの値を基準値以下に押さえるというスタンスで見ますと、基準値は高くせざるを得ないかなと。ですから実際の処理水というのは当然、河川の環境基準などを、例えば3とか2とかそういう水質は場合によっては出ていますし、場合によっては出せないということで、出せないということはないと思います。もし出そうと思いますと、よほど流量調整をしっかりするとか、生物処理を使っていますのでどうしても季節変動があるんですが、その辺をちゃんと微生物が定常的に効果を出せる環境を作ってやれば可能だとは思います。

質問者1:

 さっきもBODが2とか3とかいう数値も出ていましたので、判りました。ありがとうございました。

司会:
 この件なんですが、EM投入前でもBOD1.9 、2.1 、11とか2.6と 凝集処理をしていてもやっぱりその時の状態で一時的に上がる場合があります。凝集処理は有機物の除去にも効果がありますので、凝集処理をしてさらにここまでの基準に落としましょう、というのがEM処理前の方向性だったんですね。
 今回の特徴というのはEM処理をして凝集三次処理を無くしちゃってからも、先程のデータのように高いところでBOD8.8 とか6.6 はあるんですが、1.7 とか1.6 、1.8 、3.5 位な数値、三次処理を使わないでここまで来ているということなんです。それをもっとより安定させるためには、今もしそのBODを約3とか4とかまた2とかですね、2ppmまでしようと思えば、施設的な容積の見直しと言いますか、十分対流接触出来る時間と、ゆっくりと沈降を促進させる時間、そういうようなことまで考慮する必要があります。そうすれば安定して河川水とほぼ同等のところまで持っていけると思います。
 ただ現状の浄化槽の構造基準はそこまで余裕を見ないものですから、やはりいろんな運転管理の中で多少の変動は出てくると思います。その他のご質問どうですか。

質問者2:
 間欠バッキというのを1日4時間とおっしゃったけれども、何分の回数何回ぐらいになっているんですか?

水野:
 はい、ちょっと発表の仕方が悪くて申しわけなかったんですが、4時間を1日3回やっております。バッキの仕方は4時間バッキ、4時間停止、4時間バッキ、4時間停止、4時間バッキ、4時間停止で合計1日12時間のバッキ時間です。

奥田:
まあ、それは施設によっても違って来ますのでやっぱり具志川図書館の場合は、ほとんどの水がリサイクルされているというのもありますし、施設の容量に余裕があるということもあるので全体で2時間でも済むんですけれども、光風荘施設の場合はやはりいろんな負荷が高いということもあるし、あと施設の状況もありますし、今は12時間で安定させているわけですね。だからされるときには、流入水の状況とか窒素やリンのバランスとか、そういうものを見ながら段々減らしていくんですが、一概には言えないので実際にやられるときには、いろんなことを考慮してやられたら良いと思います。

司会:
 ついでに付け加えますと先程発表の中にもあったんですが、光風荘の場合は沈澱槽汚泥返送のエアリフトのブロアとバッキのブロアが同一なんですよね。ですから一気に嫌気時間帯を長くしますと、沈澱槽で堆積汚泥浮上等の問題が出てくる場合もあるんです。だから順に調整しながら2時間から始まって、3時間に延ばしていった。発生する窒素ガスをつかんで堆積汚泥が浮くことのないような返送バランスを微調整しながら行って、最終的に連続嫌気4時間で落ちついているということです。
 ただ槽内のMLSSがやや上昇気味なものですから、第2ステップとして1日バッキ停止は6時間を3回ですね。3×6=18、あとの残り6時間がバッキ時間、ですから2時間バッキと6時間停止の組み合わせと言いますか。ここまでたぶん持ってきた方が良いのではないかと。そうなりますと、沈澱槽のエアリフトとバッキのブロアが同一だということは支障が出てくる。6時間滞留させるということは対策として簡易的な装置が必要だと考えられます。それは沈澱槽のエアリフト、このエアリフトを使わず別に水中ポンプを入れて、それを返送にしてしまう。それで6時間バッキ停止ですから、6時間バッキ停止だけさせるとやっぱり汚水浄化の兼ね合いもありますので、バッキ槽の中に攪拌用の水中ポンプを1台放り込んでやる。そうするとバッキは停止しているんですけれどもバッキ槽の中の汚泥と入ってきた汚水は、ゆるく接触していくわけですね。接触することによって、また浄化が始まっていく。6時間バッキを停止して何もしない、というのではなくて6時間も停止させるんだったらその間に汚泥とゆるく接触させてあげようという__。
 だからこういう2台の水中ポンプの設置があれば、6時間という指標がひょっとしたら1回7時間まで停止しようが、最終的に具志川図書館のように1日のバッキ時間は1時間、2時間、3時間でいいんじゃないか、というところまで持ってこれるのかも知れません。ただ具志川図書館の浄化槽と光風荘の合併処理浄化槽とは流入負荷の差がありますので、まるっきり同じ時間に設定出来るかどうかは言えないと思いますが、そのような可能性は十分あるということです。
 こちらは汚水処理分科会ですので、それぞれ汚水処理を維持管理する方も、また維持管理してもらっている方もお出でだと思うんですけれども、この光風荘の事例というのは非常に身近でかついろんな効果を持っていますので、是非ご参考にして欲しいと思います。こちらの方から今発表をされました水野さんへですが、光風荘がこのように成功したポイントというのはどういうことでしょうか。

水野:
 浄化槽の所有者である施設の方、維持管理をされている浄化槽管理会社の方、それからいわゆるコンサルティングになると思うんですがEM研究機構、この三者が密接に連携を取りまして、この浄化槽に対してEM浄化法でどこまで出来るか追究していった。
 この三位一体の追究態勢を取れたということが、今回ここまで大きく運転変更をして効果が得られた成功理由ではないかと思います。

司会:
 はい。そういうことですよね。この三位一体と言いますか、こういうかたちで取り組んでいくと、いろんなことが出来る。
 従来の手法と技術に固執してしまうと新しい技術は生まれない、ということだと思うんですよね。ご理解を得られれば、いろんなことが出来るんですけれども。このような分科会を通じまして是非皆様の理解を深めて頂いて、またいろんなところでいろんなことを試して頂くということが必要かなと思います。
 そういう意味ではEM技術というのは、決して私どもEM研究機構のものだけではありませんし、皆様とキャッチボールをしながら作り上げていくものだと思うんです。今こういうことで、こういうようなEMの使い方、こういうような応用の仕方がありますよと。で、そういう技術をオープンにして、それを皆さんが持ち帰って各現場でやってみる。こう言われたけれども、自分のところはこういう方法よりも、いやこういうふうに変えたらもっとこうなったぞというのをフィードバックしてもらう。私たちはまたその情報を利用しながら、お聞きしながら、またステップアップの技術を作り上げていく。で、また公開していく、やっぱりキャッチボールなんです。だからEM技術というのは皆さんと一緒になって作り上げていくものだと思うんですね。

質問者3:
 まとめていないかも知れないんですがちょっとご質問させて頂きたいんですが。よくEMを投入すると放線菌のスカムが発生するというようなことを聞いていたんですが、その放線菌のスカムを抑制するにはどのような運転の仕方が考えられるのかということ。
 それからもう一つは処理水の水質を良くしようとすると、汚泥の抜き取りと汚泥の返送ですね、これはかなり処理水質を良くするために考えていかないといけないと思うんですが、それについて何か知見とか今までこうやったらうまいこといった、とかいうのがあればお教え頂きたいんですが。

司会:
 まず放線菌の件ですが、EMを入れたから放線菌が増えるとは言い切れないと思うんです。というのは山形の鶴岡でしたか、あそこは逆に従来の手法で放線菌が出て、スカムが非常に多くて汚泥の滞留時間、SRTを長く出来なかったと。EMを入れ始めて逆にスカムが出なくなって、汚泥維持を長く出来た。長く出来た結果、自己消化も進んで汚泥が減った。そういう事例がございますので、一概には言えないと思います。
 放線菌が出る理由というのは、滞留時間いわゆるSRTが長くなることによって、放線菌が増殖する時間的な余裕が出てくる。放線菌というのは強疎水性のミコール酸を生成するんです。強疎水性ですから水と当然親密性がないということで、汚泥の回りにくっついていって、胞子を伸ばして、それで浮かせてスカム化するということなんですね。そういう意味では、EMを入れたから放線菌がということは一概には言えないということですね。
 同じ汚水処理として先程の光風荘を例に取ると、いわゆるSRTが長くなったから放線菌が出やすいとするならば、じゃあこの光風荘の事例はどういうことなんだろうかと。確かに下水と合併浄化槽とではMLSSとかにかかる負荷はまるで違います。下水はMLSS1Kgあたり大体0.2 から0.4 KgBODですよね。対して長時間バッキタイプというのは、大体0.05KgBODですから。負荷が違いますので一概に比べられないんですけれども。ただこれだけぐるぐるぐるぐる回しているこの結果としてのSRTなんて、もう計算出来ないぐらい長いんですね。そうすると放線菌も出て来なければいけないんです、でも出てこないんです。ですからその時にはその処理場の流入基質だとかいろんな条件が関係して来ますので、特別そのような兼ね合いは懸念しなくていいんじゃないかと思います。それから汚泥の抜き取り、返送のタイミングということでしたが、汚泥界面がしっかりしていれば大丈夫ですね。よくSV30%とか50%だからとか言われるんですけれども、極端な話SV98%でも越流いわゆるキャリー・オーバーしないということもあるんで、ですから汚泥を30分沈ませて、汚泥界面がどうであるかということだけ注意しておけば良いと思うんですね。
 ついでに汚泥についてですが、普通の場合汚泥貯留槽に置くと腐敗臭気も発生しますし、また表面固くなって来たりするんですけれども、EMでぐるぐるぐるぐる回していくと先程の発表にもあったように、臭いも通常の浄化槽汚泥臭気ではなくなりますね。EM処理当初汚泥貯留槽は常時攪拌をかけてあったんです。汚泥貯留槽を汚泥貯留槽にしなかったんですね。というのは生物脱窒、生物脱リンをやらせるために浮遊の活性汚泥が欲しかったんです。ここはやる前は接触バッキ方式ですから固定ろ床だけだったんです。汚泥貯留槽というのはバキューム車が来て引き抜く時だけエアーをかけますが普段は攪拌しないものです。でもそれを通常時から攪拌状態にしておいて、汚泥貯留槽から返送汚泥として回した。それで脱リンをさせる遊離の活性汚泥を確保し、ぐるぐるぐるぐる循環させることによってEMの密度を高めていったということなんです。
 ただ流入有機物の量から、まだ1日12時間のバッキだけだとMLSSが右方上がり気味で、そのうちもっと多くなるぞと。そうするとあとは嫌気時間を延長させて汚泥の生成を抑制するという方法と、それからEMが回り込んでいますから、腐敗の汚泥には変わらないという確信から貯留槽攪拌を止めて、EMの嫌気分解を促進してみよう、ということで止めた。止めた結果、先程発表にあったように上には腐敗臭のしない汚泥がスカムとして残っているというようなことです。

質問者3:
 ありがとうございました。

質問者4: 
 北島と申します。汚泥量のことにつきまして、お聞きしたいと思います。
 EMを使うことによりまして、汚水処理では大幅に汚泥量が少なくなるということでありますけれども、一方で汚泥の有効利用ということで例えばブロック等の建材に使用されるという方向があります。
 今後EMの活用あるいは研究次第で、限りなく汚泥量をゼロに近づけるという方法に行くのか、それとも先程申しましたように有効利用の方に、あるいは両方で行くのか。特に今後のやり方によって汚泥量がいかに少なくなっていくのか、ということに非常に私は関心を持っておりまして、その辺いかがでございましょうか。

奥田:
 私たちがやはり目指しているのが循環型の社会の構築ということで、比嘉先生もよくおっしゃっているとは思うんですけれども、減らしたかったら減らしてもいいと。だけどやっぱりこうすればもっと良くなる、という方法があるわけですよね。
 先程の肥料化にしてもそうですけれども、今日本では有機農業を推進するにあたって絶対的に有機肥料というのが足りないわけで、ただ法律から言って下水汚泥というのは有機肥料には使えないんですけれども、この部分さえクリア出来れば年間に何千トン何万トンと有効な資源として再利用出来るわけですから、出来れば私たちの研究としてはよりそちらの方に副次的に効果が出るようにやっていきたいと思っております。  
 それからこれは私のまだ考えの段階なんですけれどもEMの回り込んだ汚泥というのは工業利用しても、例えば燃やして灰にしても何らかの効果を持つのではないかと。もしかしたらセラミックスと同じような効果が出るかも知れない。将来的にはそういうところまで研究を進めていきたいと思っております。

日比野:
 補足で申し上げます。どちらの方法で選ぶかは、そこの運転管理される会社ですとか、自治体ですとかの方針にもよると思うんです。
 私は盛岡事務所の研究員なんですけれども、こちらは農業集落排水が結構あるものですから、うまく堆肥化してまた戻したいという取り組みが何件かあります。
 また通常の運転ですと、空気を送れば送るほど微生物が増えるんですけども、汚泥を減らしたいんであれば、うまくバッキ時間とかをもっと厳密に調整して、嫌気状態を長く保つことで自分で自分を消化する自己消化という現象を起こさせることによって汚泥が減るということがあります。その方向性はどちらにも持っていくことが出来ますので、あとはそこの運転管理されている人の考え方によると思います。

司会:
 はい、よろしいでしょうか。
 その他どうでしょうか、ご質問の方は。はい、どうぞ。

質問者5:
 下水汚泥を堆肥化とかする場合に心配なのが重金属の問題だと思うんですけれどもその辺の方は対策と言うか、大丈夫とかそういうのがあるんでしょうか。以上です。

奥田:
 今私たちがやっているところでは重金属でひっかかるところはありません。
 一般の下水処理場ですと、よほど工場が集中していない限りはほとんど重金属は出ないんですが、やはり少量は含まれますのでその辺はきちんとチェックしています。
 実際に重金属の除去に関して、今まで比嘉先生からも話があったと思うんですが、もっともっと研究しないといけない部分で、どうやったら例えば水銀とかカドミウムとかそういう危険性の高い物質が安全になるかというのはまだまだ実際のところ研究課題です。ただ今まで多少重金属が含まれているものをEM処理して肥料化したときに、ほとんど害は出てない状況にあります。
 例えば石炭灰を混ぜた場合とか、きちんと発酵の過程を取ればEMのいわゆる抗酸化力と言われますけれども、そのような作用を受けてどうやら害の出ないかたちになっているというところまでは分かっています。ただそこは本当にこれからの研究課題で、もっともっとやって行きたいところです。今はその程度しか言えないんですけれども。

司会:
 はい、よろしいでしょうか。  その他のご質問ございますか?  
質問出てくるのかなと思ってたんですが、時間の制約もありますので私の方からEM浄化のポイントについてお話しをさせて頂きます。
 間欠バッキ手法というのはEMを使うことでは非常に有効であり、相性が良いと思います。好気の分解と嫌気の分解を組み合わせていくんですが、その効用というのは先程もありましたけれども余剰の酸素が少ない分、汚泥の生成抑制が出来ます。それからぐるぐるぐるぐる回すと、通常は滞留時間が長いことにより汚泥の吸着と酸化のバランスが崩れて、沈みにくくなるというようなこともあるんですが、間欠にすることによって、それを抑制できる。かつバッキをかけている時だけの運転ですので、槽内のMLSSを多く維持しても大丈夫だと。多く維持出来るということは低負荷ですから、言い換えれば汚泥量に対してエサが少しですから、そうすると自己増殖の方にエネルギーを多く使わないんですね。そうするとさらに発生汚泥を抑制出来るというメリットもまた出てきます。そして酸化抗酸化反応の引き出しが出来る。
 酸化抗酸化反応、比嘉先生の著書に出てくるんですけれども、通常の場合は好気の酸化と嫌気の還元ということで酸化還元反応。しかし比嘉先生の著書にはEM処理をしていくと酸化抗酸化反応と説明されているんですね。これは嫌気にした時に嫌気分解というのは2種類あるんだと。いわゆる腐敗発酵、酪酸醗酵と言われる有害発酵と、それから乳酸菌等による有用発酵があるんだと。
 EMの密度を高めて嫌気分解を有用発酵側に持っていくと、EMの産生する抗酸化物質が出てきますので、還元反応ではなくて抗酸化反応になっていくんだということなんです。
 還元反応はタンパク質関係が分解されていくと、窒素のNに水素基(H)がどんどんついてきて、いわゆるアンモニア(NH3)の方に変わっていきます。抗酸化反応だと炭素の骨格に、カルボキシル基(COOH)、水素基(H)1つ、アミノ基(NH2)、そして側鎖がついてアミノ酸の系統になって来るんですね。還元はNH2をNH3にしてアンモニアとなって臭いを出してしまうんですけれども、抗酸化反応になるとアミノ酸に変えていきますから臭いを出さない。
 炭水化物の分解も還元反応だとCH3に水素基(H)がついてCH4いわゆるメタンになって臭いを出すんですけれども、抗酸化反応というのはCH3から逆にアルコールに変わって、さらに糖に変わっていく。ですから臭いを出さない、ということです。
 水の清澄度、先程EM処理をして処理水の清澄度がワンランク上になりましたということも、間欠バッキの嫌気のところで抗酸化反応が起こっているんですね。
 普通は嫌気分解というのは好気分解よりなかなか水の清澄度を保てない、きれいにならない。それで好気処理が盛んになったんですけれども、ところが抗酸化反応というのは還元反応、腐敗分解ではないですから、今言ったような理由で水を清澄にしていく力があるということなんです。ここが大きな特徴じゃないかなと思います。
 この分科会に来ていただいた方に、是非ここはご理解して頂きたいと思ったところです。その他ご質問なければ。  
 時間も参りましたので一応最後のお話しをさせて頂きます。
 発表事例とその後の質疑応答を通じまして臭気抑制とか、窒素除去、リン除去、それから発生汚泥の抑制、放流水のランクアップというようなことについて、皆さんのご理解が深まったんじゃないかなと思います。ただ冒頭で私は、私たちの今の生活というのは自然への負荷を高めた上に成り立っているんだと。結果として自然が浄化機能を失いつつあると申し上げました。  
 真の文化的生活というのは、やはり自然との共生の上に成り立つものだと思うんですよね。一方的に自然に負荷を与えるというのは、これはやはり真の文化的生活ではない。だとするならば私たちは自然と共生し、水系に共生するものの責務として出来るだけ早い機会に自然の浄化機能を取り戻す努力が必要じゃないのかというように思います。
 ここにEMにしか出来ないと言いますか、EMの担う役割があると思うんです。
 最後の事例発表にありました自然を蘇生させる抗酸化物質を含む生きた水、生きた放流水ですね。汚水処理施設の大小に係わらずそれから汚水処理施設を管理する側、管理される側問わず、出来るだけ多くの施設から自然を蘇生させる、自然の生態系を回復させるいわゆる生きた水を流し続けることが、山紫水明の国と言われた美しい自然を回復させるための術ではないかと考える次第です。
 是非皆さんのご理解を得て、多くの施設にEM浄化を取り入れて頂き、その蘇生した水を流し続けて頂ければと思います。どうもありがとうございました。